2022年F1第20戦メキシコ・シティGPが開幕し、フリー走行1回目(FP1)が気温26度、路面温度48度、風速2.9m/s、湿度40%、天候は晴れというドライコンディションで行われた。
●【2022F1第20戦メキシコGP】フリー走行1回目のタイム差、周回数
■母国凱旋のペレス3番手
FP1のトップタイムはカルロス・サインツ(フェラーリ)、2番手はシャルル・ルクレール(フェラーリ)、3番手は母国GPを迎えているセルジオ・ペレス(レッドブル)だった。
母国凱旋の英雄ペレスがコースインすると大観衆から大声援が聞こえてきた。期待の大きさが伝わってくる。
フェラーリは無線で、「後ろにはアウトラップのデブリースがいる」とサインツに伝えると、「だれ、なんのこと、デブリース?」と冷静に聞き直す。ピットも気がつき、「はっ、違った、デ・フリースだ、ごめん」と訂正した。コース上に飛び散ったパーツなどをデブリと呼ぶが、それと混同して言い間違えてしまったようだ。
2年連続でF1チャンピオンを獲得し、年間最多勝を狙うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は4番手。序盤は路面が汚れていることからスピン。「グリップが少ないね(笑)」と無線でも思わず笑ってしまっていた。
レッドブルと同じくHRC(ホンダ・レーシング)サポートのパワーユニットを搭載しているアルファタウリF1は、ピエール・ガスリーが9番手、角田裕毅に代わってドライブしたリアム・ローソンが16番手だった。
■ベッテル、追悼ヘルメット
ここでも多くのドライバーが特別カラーのヘルメットで出場しているが、中でも注目はセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)だろう。
レース人生で重要な時期のカートからF1チャンピオンまでずっとサポートを続けてくれた恩師、レッドブル共同創業者ディートリッヒ・マテシッツ氏に賛辞と敬意を表し、デビュー当時のレッドブルカラーのデザインで出場している。
アストンマーティンもこの申し出を許可して、公式SNSで紹介した。また、チームとしてもF1に大きな影響を与えたマテシッツ氏に感謝の意を表し、「アストンマーティンの全員より、Danke Didi(ありがとうディディ)」と発信した。ライバルではありながらも同志でもあるF1界の絆の強さが分かるストーリーだ。
■ベッテル、歴代3位のラップリードドライバー
そのベッテルは、先週のアメリカGPでレース中のラップリード累計3,500周を達成した。これは歴代3位の偉大な記録だ。歴代1位はルイス・ハミルトンの5,432周、歴代2位はミハエル・シューマッハの5,111周となっている。
■2つの大きな裁定が発表
このセッション前、2つの大きな裁定が出た。
1つ目は、先週のF1アメリカGPのレース後、ハースが抗議したことでフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が7位から15位に落ちた件は、アルピーヌの抗議が認められ、アロンソは7位に復活している。FIAの裁定について、またもや多くのチームが一貫性を持って欲しいと訴える結果となった。
2つ目は、昨年のレッドブルとアストンマーティンの予算上限問題が違反と判断され、罰則が発表された。
レッドブルは予算上限の1.6%にあたる約3億1,900万円の予算オーバーだったことが判明したため、罰金約10億と空力開発時間10%削減が科された。もともとチャンピオンを獲ったチームには7位以下のチームに比べて70%の時間しか空力開発が許可されていないため、ここから10%を差し引いて、来シーズンに向けては63%しか空力開発に時間を割けないことになり、大きな影響を受けることになる。
アストンマーティンは手続き上の違反だったため、罰金6,650万円のみで済んだ。
■FP1に出場したルーキーは5名
今回、ルーキー枠で走行したのは5名で、全員がハードタイヤで周回を重ねた。
順位 ルーキー枠/レギュラードライバー
16番手 リアム・ローソン(アルファタウリ)/角田裕毅
17番手 ローガン・サージェント(ウィリアムズ)/アレクサンダー・アルボン
18番手 ニック・デ・フリース(メルセデス)/ジョージ・ラッセル
19番手 ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)/エステバン・オコン
20番手 ピエトロ・フィッティパルディ(ハース)/ケビン・マグヌッセン
残り26分過ぎ、ピットレーン出口でスタート練習をしてわずかに進んで止まってしまったジョウ・グァンユ(アルファロメオ)は、「ギアシフトが上げられなくなったためエンジンを切った」と無線で伝えた。コースマーシャルにピットレーン内まで押し戻され、チームスタッフがガレージに押し戻した。
その直後、残り23分過ぎに赤旗が出された。今度はケビン・マグヌッセン(ハース)の代わりにルーキー枠で走行していたピエトロ・フィッティパルディが、ターン2と3間のコース上で止まってしまっている。無線でマシンを止めるように指示された際、マシン後部から煙が出ていたが、どうやらMGU-Hの問題が発生したようだ。
残り17分でセッションは再開している。
残り4分となったところで、角田裕毅(アルファタウリ)の代わりにドライブしたリアム・ローソンがスタジアムセクションでマシンを止めてしまった。熱を帯びたブレーキからは炎が出てしまい、コースマーシャルが消火器で消している映像が映っていた。スタジアムセクションに入る前、ローソンのマシンからは異音がしており、どうやらエンジンに問題が起こったようだ。
セッションは残り時間が少なくなったため、ここでFP1は終了した。
■FP2は90分、来季用タイヤテスト実施
日本時間6時から始まるフリー走行2回目では、ピレリの来季用タイヤテストが実施されるため、通常より30分延びて90分間の走行となる。本来は日本GPでタイヤテストを実施する予定だったが、雨でテストがキャンセルになったため、このメキシコGPでタイヤテストが行われることになった。
また、FP1に出なかった5名のレギュラードライバーについては、序盤45分間はセットアップのために自由に走行できる。ただし、タイヤテストが優先されるため、序盤走ることができない場合は45分間をフル活用できなくなる。
■【F1メキシコ・シティGP】フリー走行1回目
1 C.サインツ(フェラーリ)
2 C.ルクレール(フェラーリ)
3 S.ペレス(レッドブル)
4 M.フェルスタッペン(レッドブル)
5 L.ハミルトン(メルセデス)
6 F.アロンソ(アルピーヌ)
7 V.ボッタス(アルファロメオ)
8 L.ノリス(マクラーレン)
9 P.ガスリー(アルファタウリ)
10 S.ベッテル(アストンマーティン)
11 D.リカルド(マクラーレン)
12 G.ジョウ(アルファロメオ)
13 L.ストロール(アストンマーティン)
14 M.シューマッハ(ハース)
15 N.ラティフィ(ウィリアムズ)
16 L.ローソン(アルファタウリ)
17 L.サージェント(ウィリアムズ)
18 N.デ・フリース(メルセデス)
19 J.ドゥーハン(アルピーヌ)
20 P.フィッティパルディ(ハース)
なお、メキシコ・シティでのF1グランプリは、2025年までの開催延長が発表された。