レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)によれば、近年のF1では会計士の果たす役割が非常に大きくなってきているという。
■予算規制のもとで戦われているF1
現在のF1にはバジェットキャップと呼ばれるチーム予算上限が設けられており、2022年の場合は1億4000万ドル(現在のレートで約192億円)の年間予算内で戦うことが求められている。
今季は世界的なインフレーションに対応するために若干の調整が行われたとは言え、F1チームが使うことができる予算は統括団体であるFIA(国際自動車連盟)によって厳しく管理されており、資金をどれだけ効率的に運用できるかもシーズンを戦う上での大きなカギとなっている。
■シーズンを戦う上で財務部門の働きが非常に重要に
マルコは、とりわけトップF1チームにおいては、財政的考慮が重要なポイントになっていると言う。
「財務部門は大幅に拡張されてきたよ」
『motorsport-total.com』にそう語った79歳のマルコは、次のように続けた。
「以前は、エンジニアたちはいくら必要かを言うだけでよかった。そして、もしそれがビジネスプランから外れる場合はザルツブルクのレッドブル(レッドブル・レーシングとアルファタウリのオーナーである世界的エナジー飲料メーカー)と調整する必要があった」
「今では、資金提供者との協力によってアップデートや、そのアップデートの規模が決定される形になっているんだ」
マルコは、それゆえ、会計士が「どこかでお金を節約する」方法を見つけ出すことができれば、まだシーズン中に重要なアップデートを投入できる可能性もあると語り、次のように付け加えている。
「これは、FIAが学び、その一方で我々も学ぶというプロセスなんだ。私は、それによって(F1が)会計士の選手権にならないことを願うよ」
■コスト調整のカギとなるのは人員配置戦略?
F1チームにとっては、どうやってコストを抑え、予算をどれだけ有効にF1マシンの開発に投じることができるかが重要になってくるわけだが、その中でも対応に苦慮するのが人件費の部分だと言われている。
実際のところ、大勢のスタッフを抱えていたレッドブル、フェラーリ、メルセデスなどのトップF1チームは、バジェットキャップの範囲内でF1プロジェクトを推進するためには、チームの人員規模を削減する必要もあったようだ。
例えば、フェラーリではこれまで自分たちのF1マシン製造にかかわっていたスタッフたちの一部を、技術提携契約を結んでいるハースに送り込むことで、スタッフの解雇といった最悪の手段を避けたようだ。
そして、レッドブルもそれと似た対策を今後講じていくことになるようだ。
■自分たちには人員の受け皿があるとヘルムート・マルコ
伝えられるところによれば、レッドブルは2022年型F1マシンをさらに軽量化するための開発に着手したようだ。もちろん、それにはさらなる費用が発生することになり、その分のコストを何らかの形で削減する必要が生じることになる。
マルコは、それをスタッフ数で調整することも視野に入れていると示唆している。
「レッドブル・レーシングの人員は削減されたが、我々にはまだレッドブル・テクノロジーズがある」
F1以外のプロジェクトを担当しているレッドブルの研究開発部門であるレッドブル・アドバンスト・テクノロジーズに言及しながらそう語ったマルコは、次のように付け加えた。
「(F1部門からほかの部門へ)異動して別の仕事をすることになる人たちも出てくるだろう。我々にはハイパーカー(高性能スポーツカー)もあるし、アメリカスカップ(競技ヨット)もある。ほかにも失いたくないスタッフを受け入れているプロジェクトがあるよ」。