FIA(国際自動車連盟)が統括する女性ドライバーだけによるフォーミュラカー選手権であるWシリーズで2度チャンピオンとなり、今季も現時点でランキングトップに立っているイギリス出身のジェイミー・チャドウィックが、モータースポーツの最高峰カテゴリーであるF1で女性が男性と共に戦うことができるかどうかはわからないと語った。
■女性ドライバーの成功例がほとんどないF1
モータースポーツは男女の別がない数少ないスポーツのひとつだ。これは、自分の身体を使って走ったり、泳いだり、ものを投げたりするわけではなく、マシンを使って戦う競技であることがその理由のひとつだと言われている。
だが、実際のところ、これまでモータースポーツで成功した女性ドライバーは非常に少ないのが現実であり、ことF1においては、最も成功した女性F1ドライバーとして知られるイタリア出身のレラ・ロンバルディが1970年代前半に通算17レースに出走し、女性として唯一F1でポイントを獲得(0.5ポイント)したのが最高の結果となっている。
近年では以前よりも多くの女性がモータースポーツに挑戦するようになっているが、そうした女性たちの活躍の場を広げるための施策の一環として2019年に発足したのがWシリーズだ。
■女性がF1で活躍できるかどうかはわからないとチャドウィック
2020年は新型コロナウイルスのパンデミックにより開催されなかったが、2019年と2021年に連続でWシリーズチャンピオンとなった24歳のチャドウィックは、こうした問題について次のように語った。
「私はF1で戦うことを目標にしていますが、実際に何ができるのかはわかりません」
「F1に参戦するためには、F3やF2といったフィーダーシリーズを経なければなりません。そしてそれには非常に体力が必要なんです。F1は非常に肉体的負担が大きいスポーツですし、女性がこのスポーツでどの程度の能力を発揮できるのか、私たちにはわかりません」
「15歳あるいは16歳で、パワーステアリングもなく、大きな重いクルマを運転するカーレースに参加すると、たとえゴーカートで成功した女性でも苦戦する人が多いんです」
「私たちは、女性でもできると思いたいんです。そして、私はよろこんでモルモットになりますし、F1への選択肢を模索するためにベストを尽くすつもりでいます。でも、わからないんです」
「近年、それを実践した女性はいません。私は、それが身体的な面との関係なのかどうかを理解しようとしているところなんです」
「もし、肉体的にハードすぎるのに、女性が競技することをこのスポーツが望むのであれば、私たちはもういちどそれに取り組み、その理由を理解しなければなりません」
■女性が能力を発揮できるようF1マシンを修正する必要も?
チャドウィックはWシリーズに参戦するかたわら、2019年からウィリアムズの開発ドライバーも務めている。そして彼女は、力が強く身体が大きな男性に女性が対抗するための唯一の手段は、マシンに必要な変更を加えることかもしれないと考えているようだ。
チャドウィックは、そのためには、例えばステアリングホイールの厚みといった細部にわたって検討する必要があるだろうと次のように続けている。
「女性の手は必ずしもそれほど大きくないので、どうしたらもっと薄くできるのか」
「ペダルの近さに制限を設けることなく、適切な力を発揮できるようにするにはどうしたらいいのか」
「そして、最近のコックピットはとても幅が狭くなっていて、お尻が大きい女性には窮屈なんです」
そう語ったチャドウィックは次のように付け加えた。
「このようなことの多くが明らかな理由によって見過ごされてきました。ですが、今、私たちはそれらがパフォーマンスに違いをもたらすかどうかを確認する必要があるんです」。