1980年代終盤から90年代序盤にかけてイタリアの名門F1チームであるフェラーリを率いた経験を持つチェーザレ・フィオリオは、フェラーリは戦略責任者を解任するべきだと考えている。
■マシンの強みを生かすことができていないフェラーリ
2022年のフェラーリは最強F1マシンの開発に成功したものの、信頼性の問題や戦略ミスなどにより、うまくポイントを積み重ねることができていない。
現在ドライバーズランキング2位に位置しているシャルル・ルクレールと、トップに立っている2021年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)との差はすでに80ポイントにも開いてしまっており、普通に考えればかなり致命的な状況だと言えるだろう。
だが、フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットは、これほどまでに差が開いてしまった原因のひとつにはチームとしての戦略ミスもあったと認めてはいるものの、現在のチームの陣容を見直す必要はないと主張している。
しかし、83歳のフィオリオは、それには納得できないようだ。
■フェラーリ会長による人事介入を期待していたフィオリオ
「ブダペストでの出来事(第13戦ハンガリーGPでの戦略ミス)のあと、私は確かにジョン・エルカーンの介入を期待していたよ」
母国イタリアの雑誌『Autosprint(オートスプリント)』に、ステランティス N.V.の会長であり、現在はフェラーリ会長も兼務するジョン・エルカーンの名前を出してそう語ったフィオリオは次のように続けた。
「残念ながら、非常に多くのミスがあった」
「2022年のマシンは非常に競争力があるし、チームが過去2年間と比べて進歩したことがわかる。その功績はビノットのものでなければならない。彼は常に技術面で非常に熟練しており、エンジニアたちを率いて勝てるマシンを造っているよ」
だが、『Autosprint(オートスプリント)』は、ビノットの現在の契約は今シーズンの終わりまでしかないとし、もしも今季またタイトルに手が届かなければビノットがチーム代表の座から追われる可能性もあると示唆している。
■問題はチーム代表ではなく戦略責任者
「マッティアは、もともとデザイナーであり、F1-75(フェラーリ2022年型F1マシン)で示されたように、仕事のやり方は非常によく知っている」
フィオリオはそう語ると、次のように続けた。
「彼にはただ、この文化にもっとよくフィットする人材が必要なだけだ」
「ビノットは留まらなくてはならない。だが、ルエダはそうではない」
フィオリオが言及したルエダとは、フェラーリの戦略責任者を務めるイニャキ・ルエダのことだ。
「彼は、これまで自分が働いてきたさまざまなチームにポジティブな影響を与えたことは一度もないよ」
ジョーダンやルノーでシステムエンジニアを務めていたスペイン出身のルエダ(現在44歳)は、2011年にロータスで戦略責任者となり、その後2014年シーズン後にフェラーリに移籍し、2021年1月には戦略及びスポーティング責任者に指名されている。
■現場での直感に頼れないのがフェラーリの弱み
フィオリオは、フェラーリの戦略ミスが多いのは、ほかの有力F1チームの流れに従って戦略部門の核となる部分をマラネロにあるレースコントロール部門にアウトソーシングしていることがその一因だと考えている。
「現代の戦略は非常に先進的で複雑な数学的モデルに基づいている。それは、残念ながら、もはや個人の直感とは一致しないんだ」
「レースでは、数秒のうちに決断を下さなければならないことも多い。数十ものモデルを分析し、コンピューターを扱い、遠隔でコミュニケーションをとるような暇はないんだ」
そう主張したフィオリオは、次のように付け加えた。
「つまり、今のフェラーリには、この個人的な直感が欠けているんだよ」