ルイス・ハミルトン(メルセデス)が、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が今年からマシンに乗り込むときには一切のアクセサリー着用を禁止するという方針を打ち出したときに、それに抵抗するために嘘をついていたことを認めた。
■アクセサリー禁止に強く抵抗していたハミルトン
FIAがそうした方針を打ち出したのは安全性の理由によるものだった。FIAはアクセサリーを禁止するだけでなく、ドライバーの下着などに関しても制限を設けたことから、ドライバーたちの中にはこうした制度に対して不満を口にする者もいた。
とりわけ、7度F1チャンピオンとなった実績を持つハミルトンにとってはアクセサリーの禁止が重大な問題だったようで、この問題に関して激しい抵抗を見せていた。
アメリカの『Vanity Fair(ヴァニティ・フェア)』誌からこの件について質問された37歳のハミルトンは、アクセサリー着用禁止を強行に進めたFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長のことを示唆するように次のように答えた。
「人は権力を持つことが好きなんだ。そして、その力を行使することがね」
「僕は子供のころから、ルールや、何かをしろと言われるのは決して好きじゃなかったよ」
■簡単にはずせないピアスがあるというのは「嘘」
ハミルトンは、FIAがコックピットでのアクセサリー着用禁止に動いたのは、とりわけ自分をターゲットにしていたのではないかとさえ疑っていたようだ。
「まぁ、そうだね。だって、アクセサリーをつけているのは僕だけなんだからね。本当に」
ハミルトンは、当時、自分はアクセサリーをはずすつもりはないと主張し、その理由として簡単に取り外すことができないピアスをしている部分があるのだと主張していた。
だが、今回のインタビューにおいて、ハミルトンはそのとき自分が嘘をついていたことを認めている。
「僕はただ、そうやって遊んでいただけだよ。僕はほかにはどこにもピアスはつけていないんだ」
「だけど、『クソッ、あいつはタマにピアスをしているのか?』というように思わせるのが僕は大好きなんだ」
■2021年のF1最終戦で正しくないことが行われたのはわかっていた
一方、ハミルトンは、レースディレクターを務めていたマイケル・マシの解任につながった2021年のF1最終戦アブダビGPでの出来事についても語っている。
「ああいう展開になり始めるのを見て、自分にとって最悪の恐怖が生じてきたんだ。僕は思ったよ。『彼らがこんなやり方で僕を騙すなんてありえない。ありえない。そんなことは起こらない。絶対にない』ってね」
「何が起こったかはわかっていたよ。どんな決定がなされたのか、その理由もわかっていた。そう、何かが正しくないということはわかっていたんだ」
ハミルトンからすれば、レースディレクターの誤った判断によってマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に2021年のF1チャンピオンの座を奪われてしまったということになるわけだが、当時は2022年までメルセデスとの契約を結んでいたハミルトンがそのままF1を去る可能性すらあるとも言われていた。
だが、今年もF1グリッドに姿を見せたハミルトンは、その後メルセデスとの契約を2023年まで延長している。そのことについて質問されたハミルトンは次のように語っている。
「延長することを考えなかったと言えば、僕は嘘をつくことになるだろうね」。