少し前に、3度F1チャンピオンとなった実績を持つブラジル出身元F1ドライバーであるネルソン・ピケのスキャンダルが表沙汰となったが、レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコはそのタイミングに疑問を呈している。
ルイス・ハミルトン(メルセデス)のホームレースである今季のF1第10戦イギリスGPの直前に、ピケが2021年の11月に行ったインタビュー映像がネット上に公開されたが、その中でピケはハミルトンのことを黒人に対する侮辱的な言葉で呼んでいた。
そして、このことが発端となって、ピケをF1界から永久追放すべきだとか、刑事訴追を求めるべきだという声など、さまざまな議論が巻き起こっていた。その結果、F1は今後ピケがパドックに姿を見せることを禁止している。
だが、マルコによれば、そのスキャンダルはハミルトンやメルセデスにとって非常に都合のよいものだったという。
■半年も前のインタビュー映像がなぜ?
「私はピケを擁護するつもりはないよ。だが、ポルトガル語を正しく翻訳すれば、彼の発言はそれほど露骨なものではないよ」
母国オーストリアの『Osterreich(エステルライヒ)』紙にそう語ったマルコは、次のように続けている。
「しかし、我々はピケのことを知っている。現役時代も、彼はいつも思慮の足りない発言ばかりしていたよ」
「唯一奇妙なのは、昨年11月のこのインタビューが、イギリスでのグランプリの数日前に表面化したことだ」
■このタイミングは「偶然ではない」とマルコ
2021年のイギリスGPではハミルトンとフェルスタッペンによる大きなクラッシュが起こっていた。ハミルトンとの衝突後に高速でタイヤバリアに突っ込んだフェルスタッペンは、その夜を病院で過ごすことになったものの、そのままホームレースで優勝を飾ったハミルトンは観衆の前で大げさなほどに喜びを表現していた。
マルコは、再びその2021年のクラッシュ問題が蒸し返されることを恐れたハミルトン陣営が、ピケのスキャンダルを引き起こすことで、大衆の関心をそちらに集中させようとしたものだと考えているようだ。もちろん、それは現在フェルスタッペンがピケの娘であるケリーと交際しているからにほかならないだろう。
「どうやら、彼らは前年のクラッシュ問題が再び蒸し返されないようにしたかったようだ」
そう語った79歳のマルコは次のように付け加えた。
「このタイミングは偶然ではないよ」
■今年はフェラーリと対等な立場で戦うことができている
一方、最近レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーが、今年はフェラーリとの間に正々堂々とした戦いができていると語っていたが、マルコも同じ考えを持っているようだ。
「メルセデスとは、常にすべてが政治的なものになってしまうんだ」
そう語ったマルコは、今年のフェラーリとの戦いのほうが昨年のメルセデスとの戦いに比べるとずっと楽しめるものになっていると認めており、先週末にポール・リカール・サーキットで行われた第12戦フランスGPでクラッシュしてしまったシャルル・ルクレール(フェラーリ)に同情を示してさえいる。
「我々は、スポーツという点では対等な立場で対峙しているよ」
レッドブルとフェラーリの戦いについてそう語ったマルコは、次のように付け加えた。
「ルクレールとフェラーリが、我々とのバトルにおいてミスを犯し続けているのは残念だよ」。