NEXT...F1開催スケジュール

フェラーリはなぜ3位走行中のサインツをレース終盤にピットインさせたのか?再び物議を醸したレース戦略

2022年07月28日(木)1:19 am

フェラーリのレース戦略についてはこれまでもミスを指摘する声が大きかったが、先週末にポール・リカール・サーキットで行われた2022年F1第12戦フランスGP決勝レースでも、フェラーリがレース終盤に決断したピットインの判断には多くの者が疑問を投げかけている。

●フェラーリとサインツのランキングは?【2022年F1チャンピオンシップ・ランキング】F1第12戦フランスGP終了後

多くの専門家がすでに見解を述べているように、“あれ”は優れた戦略ではなかったかもしれないが、ここではあえてプレッシャーの大きいフェラーリの立場で考えてみたい。

■サインツはコース上の走りで表彰台圏内まで挽回したが・・・

PUコンポーネントを年間規定数を超えて投入したことで19番グリッドからスタートしたカルロス・サインツ(フェラーリ)は、41周目、選手権を争うライバル、レッドブルの1台のセルジオ・ペレスをコース上でオーバーテイクして、レース残り12周という場面で3番手まで挽回し表彰台が期待されていた。

サインツの走りについては、コース上で次々とオーバーテイクして表彰台圏内まで上げてきて、ドライバー・オブ・ザ・デイで多くのファンが支持していた。それだけに、フェラーリの判断には多くの批判が向けられることになった。

■ピットインを選択したフェラーリの3つの要素

フェラーリはレース終盤にサインツのピットインを選択したが、この決断に至るまでには“4つの要素”を考えることになった。

4つの要素とは、タイヤ、ポイント、ファステストラップ、ペナルティだ。

■“タイヤバースト”で“0ポイント”の可能性

フェラーリが期待していたシャルル・ルクレールは、ポールポジションからスタートして25ポイントを狙っていたが、レース序盤のリタイアで0ポイントに終わってしまった。

コンストラクター選手権で2位につけているフェラーリとしては、ここでノーポイントで終わってレッドブルに引き離されるリスクは避けたかっただろう。

批判を恐れ保守的になったフェラーリとしては、ポイント圏内まで追い上げていたサインツには何としてもフィニッシュさせたい。そこでタイヤ交換をせずにリスクを負って3位15ポイントに賭けるよりも、確実に4位12ポイントまたは5位10ポイントを持ち帰ってほしかったのだろう。

レース中、サインツは「なぜステイアウトしないの?」と疑問を投げかける場面があったが、フェラーリのピットは「タイヤが保たなかった」という説明をしていた。

本当にパンクしていたかは誰にも分からないが、少なくともポール・リカールの路面は非常にタイヤが摩耗しやすいサーキットであり、これまで他のサーキットでピレリタイヤは突然バーストしていたことから、選手権を争うチームが保守的になるのも無理はない。

もし“賭け”に出てサインツまでもがリタイアになっていたら、フェラーリは別の批判を浴びていただろう。

■ピレリは2ストップ想定も全体的に「1ストップが可能だった」

レース後、ピレリのモータースポーツ責任者であるマリオ・イゾラは、厳しい条件下で「2ストップ」が想定されていたものの、レース全体を振り返ると「1ストップが可能だった」と次のように振り返っている。

「路面温度が57°Cに達する非常に暑いコンディションであったことから、我々は2ストップが主流になると想定していた。しかし、結果的には、ハードおよびミディアムが厳しいコンディションに対応できたことによって、当初予測した最速戦略である1ストップが可能となった」

「高温のコンディション下では想定通りの高いデグラデーション(劣化)とブリスター(水ぶくれ状態)の発生が見られたものの、エキサイティングで予測不能なレースにおいて、タイヤの性能そのものは損なわれることはなかった」

■タイヤは本当に限界だったのか?

サインツはミディアムタイヤで24周を走行して残り11周でピットインしたが、同じミディアムタイヤでピエール・ガスリー(アルファタウリ)は34周を走りきった。

もちろん同じ路面温度でも、マシン特性やレース中の走らせ方によってタイヤの摩耗状態は大きく変わるが、サインツがそのまま表彰台、または4位を獲れた可能性は十分にあっただろう。特にその後の49周目にバーチャル・セーフティカーが入っていたことを考えればなおさらだ。

■ペナルティの消化とファステストラップ1ポイント

もしピットインしなかった場合、ペナルティで科せられた5秒以上の差を摩耗したタイヤで後続につけることは簡単ではなかっただろうが、ジョージ・ラッセル(メルセデス)やセルジオ・ペレス(レッドブル)が18周目に交換したハードタイヤで1ストップ戦略だったことから、あのまま走り続けていれば5位よりも上位でフィニッシュできた可能性はある。

一方で、サインツはタイヤ交換をして51周目にファステストラップを記録し、1ポイントを追加獲得している。そのことから、やはりフェラーリはリスクを負って3位15ポイントまたは4位12ポイントより、5位10ポイント+ファステストラップ1ポイントで11ポイントを確実に獲りたかったのだろう。

■レッドブルならどんな判断をしていたのか?

チャンピオンシップを獲りたいフェラーリはこれまでも戦略ミスを指摘されてきたが、これらの要素を鑑みて保守的に判断したのだろう。しかし、同じプレッシャーの中で激しく戦っているレッドブルが、同じ状況下でフェラーリと同じ決断を下しただろうか。

メルセデスF1は、勝てないなら確実にポイントを積み重ねてランキング3位につけながら勝つチャンスを伺っているように、フェラーリも勝てないと判断したレースでは確実にポイントを積み重ねようとしたのかもしれない。

今後もチャンピオンシップを争うフェラーリの戦略には注目が集まることになる。

前後の記事
最新ニュースをもっと見る  >
TopNewsの最新ニュースが読めるよ!
facebookフォロー Twitterフォロー RSSでチェック