どうやら、メルセデスはこれまでずっと苦しめられてきていた「ポーポイズ現象」の問題を解決することができたようだ。
これまでとは大きく異なる新たな技術レギュレーションが導入され、シャシーそのものがダウンフォースを発生させるグラウンドエフェクト効果を持つマシンへと変わった2022年のF1だが、多くのチームがその副作用とも言えるポーポイズ現象(高速走行時にマシンが上下に何度も振動する現象)に苦しめられてきている。
中でも、メルセデスの2022年型マシンはライバルチームたちよりも強いバウンシング(マシンが跳ねること)が発生しており、バクーで行われた第8戦アゼルバイジャンGPではレース後にルイス・ハミルトンが背中に強い痛みを訴え、マシンからすぐに降りることができないという状況にさえなっていた。
メルセデスは、ポーポイズ現象をこのまま放置すればドライバーの健康問題や安全性問題にも発展していくのは間違いないとして、ルールを修正する必要があると主張。
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)はこれを受けてポーポイズ現象の発生を一定の基準以下に留めるためのマシン管理規則を新たに設けることとしたが、実際にその適用が開始されるのは夏休み明けにスパ・フランコルシャンで開催される第14戦ベルギーGP(8月28日決勝)となる予定だ。
■ポーポイズ現象はもうコントロールできているとメルセデスの技術トップ
だが、第10戦イギリスGPが開催されたシルバーストン・サーキットでは、メルセデスF1マシンのバウンシングがかなり改善されていた。そして、先週末に第11戦オーストリアGPが行われたレッドブルリンクではポーポイズ現象がほとんど気にならないレベルにまで到達していたように見えた。
実際のところ、メルセデスのテクニカルディレクターを務めるマイク・エリオットは、「今ではポーポイズ現象をコントロールできている」と認めるとともに、今後も1レースごとに着実にマシンの改良を進めていく予定だとしている。
■メルセデスの今後の課題はパフォーマンス向上
オーストリアGP決勝では予想通りレッドブルのマックス・フェルスタッペンとフェラーリのシャルル・ルクレールによる優勝争いが展開されたが、メルセデスにはまだその2チームに匹敵するほどの速さがないのも確かだった。
セルジオ・ペレス(レッドブル)とカルロス・サインツ(フェラーリ)がリタイアに終わったこともあり、オーストリアでもハミルトンが第9戦カナダGPから3レース連続となる3位表彰台を獲得している。だが、メルセデスを率いるチーム代表のトト・ヴォルフは、ハミルトンにはまだ前にいる連中に攻撃できるほどのスピードはなかったと認めている。
「パフォーマンスという意味では、我々にはまだコンマ2、3秒足りないんだ」
ドイツのテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にそう語ったヴォルフは次のように付け加えた。
「我々もフェラーリとレッドブルが繰り広げている上位争いに加わりたいと思っているよ」
■次戦フランスGPに向けてメルセデスを警戒するレッドブル
だが、来週末に行われる第12戦フランスGP(24日決勝)の舞台となるポールリカール・サーキットは非常になめらかな路面で知られており、レッドブルリンクよりもさらにメルセデスのパッケージに合う可能性があると考えられている。
ポイントリーダーのマックス・フェルスタッペンを擁するレッドブルも、フランスGPではメルセデスを警戒する必要があると考えているようだ。
「あそこでは彼らがとても速いだろうと予想しているよ」
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはそう語ると、次のように付け加えた。
「ここ2戦での彼らは非常に強かったし、ポーポイズ現象の兆候はまったく見られなかった。彼らは徐々に調子を取り戻しているようだね」。