F1オーストリアGPの1週間前、シルバーストーンでレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ホンダのF1への正式復帰について協議していることを否定した。
しかし、その状況は一変するかもしれない。
■レッドブルとポルシェの発表は延期
実は、チームのホームレースであるオーストリアで、2026年以降のレッドブルとポルシェのエンジン提携が正式に発表される予定になっていたのだ。
「私が知っているのは、レギュレーションが整えばVW(フォルクスワーゲン)グループが関与してくるということだけだが、まだそうはなっていないね」とヘルムート・マルコ博士は語った。
実際、FIA(国際自動車連盟)は金曜日のF1委員会の会合後、2026年のエンジン規則が「最終決定に近づいている」と発表している。
マルコは「秋には現実的なものになる」と語った。
■ホンダ社長らがオーストリアGPを表敬訪問予定
一方、ホンダがF1プロジェクトを正式なものに戻すことを検討しているといううわさは、今後も続くことになりそうだ。
レッドブルのホーナー代表は1週間前、「それについて我々と議論したことはまったくないね」と語っていた。
しかし、日本の専門筋によると、ホンダの代表団が今週末のレッドブルリンクのトラックサイドにいるとのことだ。
その代表団とは、本田技研工業の三部俊宏社長兼CEOと倉石誠司会長、そしてホンダ・レーシングの渡辺孝司社長という3名の人物が率いているという。このグランプリの初日から元ホンダで現レッドブル・パワートレインズに関わっている山本雅史氏がガレージ内にいるのが確認されている。
これは表敬訪問だと言われていて、コロナ渦で最終年に実現しなかったことからようやく実現させられるということのようだ。
しかし、これだけの代表団がただの挨拶だけで終わるのだろうか?
■レッドブル・ホンダ復活のシナリオ
ある関係者は、2026年の契約をポルシェとホンダが争うのではなく、2023年から2025年までの間、F1にホンダの名前を復活させることを狙っていると主張している。
レッドブルの現在のパワーユニット名は『レッドブル・パワートレインズ』だが、実際はホンダ・レーシング(HRC)管轄となった栃木県のHRD-Sakuraが開発・製造し、イギリスのミルトンキーンズにあるレッドブル・パワートレインズが運用を担当していることから、今でもこのパワーユニットを「HONDA」と呼ぶF1関係者も多い。
2026年からのレッドブル・ポルシェは発表待ちの状態だが、いきなりポルシェ製エンジンに変えることは戦力としてリスクが大きいため、ポルシェの開発がうまくいくまでは、ポルシェの金銭サポートを得ながらホンダの知見が詰まったレッドブル・パワートレインズ製エンジンを継続して使いたいのがレッドブルの本音だろう。
そのため、2025年まではレッドブル・ホンダを復活させ、2026年からは“新たに”レッドブル・パワートレインズ製エンジンを搭載したレッドブル・ポルシェとして参戦したいのではないかとうわさされている。そうすれば、新規参入者としてのメリットが得られるかもしれないという狙いだ。
ポルシェは2030年に世界新車販売の80%以上を電動化する目標を発表しているが、F1では自社製エンジンでなくてもマーケティング戦略としてF1をフル活用できることが大きなメリットになる。
ホンダにとっても、主要なアメリカ市場で、特に若者の間でF1人気が高まっていることからもメリットは大きい。これだけ強力なパワーを安定して生み出し、チャンピオンシップをリードできるチームとなった今、技術開発力はもちろんのこと、マーケティング戦略としても『HONDA』ブランド復活には十分な理由が揃っているかもしれない。
この表敬訪問がホンダF1復活のプレリュード(序曲)となるのだろうか?