レッドブルは、ジュニアドライバープログラムに所属していたユーリ・ビップスが人種差別用語を用いたことで契約を解除したものの、将来にわたってビップスに対してドアを閉め続けるつもりはないようだ。
■契約解除によりビップスに反省の時間を与えるとレッドブルのボス
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、今回のビップスとの契約解除について次のように語っている。
「我々は彼との契約をキャンセルしたが、それが間違いなく彼に反省の時間を与えることになるだろう」
レッドブルのリザーブ兼テストドライバーを務めながらF2選手権に参戦していたエストニア出身の21歳のビップスだが、同居人と一緒にオンラインゲームを楽しんでいた際に黒人に対する差別用語を用いたことから、それがソーシャルメディア上で騒動を巻き起こしていた。
そのビップスの発言には「非常に失望した」と認めたホーナーは、レッドブルではビップスの後任として、同じく現在はF2選手権に参戦している20歳のニュージーランド人ドライバーであるリアム・ローソンを新たにリザーブドライバーの座に就けることも明らかにしている。
■F2参戦は継続できる見通しのビップス
一方、レッドブルの支援を受けていたビップスを走らせていたF2チームのハイテックは、ビップスに汚名返上の機会を与えるために、今後もビップスを起用し続けることを明らかにしている。
これについて、ホーナーは次のように語っている。
「それは彼らの判断だ。そして、我々がそれに対して資金提供を行うことはない」
「それは、我々がルイス(ハミルトン)のすべての行動を完全に支持しており、我々も自分たちのイニシアチブをチーム内に適用しているためだ」
■再びチャンスを与える用意もあると示唆したレッドブル
しかし、ホーナーも将来ビップスに復帰のチャンスを与える可能性があることを示唆している。
「彼は若いし、まだ子供なんだ。だから、彼の契約が打ち切られたとしても、我々は精神衛生と教育の観点から彼をサポートすることになるだろう」
ホーナーはそう語ると、次のように付け加えた。
「彼がそこから学んでくれることを期待しているよ」
■レッドブルの若手育成プログラムは人材不足?
しかし、F1関係者の中には、ホーナーがビップスとの関係維持を示唆したのは、現在のレッドブルのジュニアドライバープログラムには人材が不足しているためではないかと考えている者もいるようだ。
また、レッドブルのジュニアドライバーのひとりであるインド人ドライバーのジェアン・ダルワラが最近マクラーレンでテストを行ったというニュースも伝えられており、レッドブルの支援を受けながら経験を積んできた有望な若手がほかのチームへ流出してしまう可能性も指摘されている。
だが、ホーナーは、自分たちのプログラムにはポテンシャルを持つ若手ドライバーが大勢所属しており、何も心配などはしていないと主張している。
「もちろん、リアム・ローソンもいる。デニス・ハウゲもF2に参戦しているし、ダルワラもほかのチームでテストしているが、我々のジュニアドライバーのままだ」
「岩佐(歩夢)も素晴らしいポテンシャルを見せている。そして、それはF2だけの話だ」
レッドブルの支援を受けながら今年からF2に挑戦している日本人ドライバーの岩佐歩夢に言及しながらそう語ったホーナーは次のように締めくくっている。
「つまり、カートからさまざまなフォーミュラシリーズに至るまで、我々は人材に事欠いてなどはいないよ」