2020年までハースに所属していたロマン・グロージャンは、現在ミック・シューマッハが苦戦しているのはハースの「典型的」な傾向によるところも大きいと考えている。
ハースがF1参戦を開始した2016年からずっとアメリカンF1チームのドライバーを務めていたフランス人ドライバーのグロージャンは、3年目の2018年には相棒のケビン・マグヌッセンとともにハースをコンストラクターズランキング5位にまで押し上げることに成功していた。
だが、翌2019年以降はハースの勢いが失速し、ランキングも2年連続で9位に下がってしまった。財政難に苦しむハースは、2021年にはフェラーリの支援を受けるシューマッハと、ロシアから巨額のスポンサーマネーを持ち込むニキータ・マゼピンの起用を決め、グロージャンとマグヌッセンはシートを失ってしまっていた。
■好スタートを切った今年のハースだがシューマッハはいまだにノーポイント
2022年もシューマッハとマゼピンのコンビで戦うことになっていたハースだが、シーズン開幕直前に起こったロシアのウクライナ侵攻問題を受けてマゼピンとの契約を解除。急遽、再びマグヌッセンがチームに復帰している。
そして、2022年シーズンが開幕すると、フェラーリとの技術提携を強化して開発を行ってきていたハース2022年型マシンが素晴らしいスタートを切ることに成功。マグヌッセンは開幕戦バーレーンGPでいきなり5位入賞を果たすと、第2戦サウジアラビアGPでも9位に入り、2戦連続でポイントを獲得している。
デンマーク人ドライバーであるマグヌッセンは第4戦エミリア・ロマーニャGPでも9位に入り、ここまでに15ポイントを獲得。現時点ではランキング12番手につけている。だが、今年2年目のF1を迎えたチームメートのシューマッハにはミスも多く、9レースを終えた時点でまだ1ポイントも獲得することができていない。
■どんどんじり貧になるのがハースの典型的パターン
2021年からアメリカにわたってインディカー・シリーズに参戦しているグロージャンは、23歳のシューマッハが今後のレースでポイントを獲得するのはかなり難しいだろうと母国フランスのテレビ局『Canal Plus(カナル・プリュ)』に次のように語っている。
「ハースの状況は助けにならないよ。ライバルたちがどんどん強くなっているからね」
「きっと、ケビンがポイントを獲得していることが常にミックの頭の中にあると思う。開幕時の5位も含めてね。だけど、ハースは、もはやそんなによくはないんだ」
「スタートはいいけれど、その後後退してしまうのがハースのシーズンの典型だよ」
グロージャンが指摘したように、マグヌッセンも第5戦マイアミGP以降は、マシントラブルや他車との接触といった不運もあったものの、ポイントを獲得することができないレースが続いている。
■シューマッハに焦りは禁物だとグロージャン
グロージャンは、いまだにノーポイントのシューマッハに対し、F1初ポイント獲得まであと一歩の11位で終えた開幕戦に言及しながら、次のようにアドバイスしている。
「ミックがバーレーンのときのようないいパフォーマンスを発揮しようと無理をすれば、ミスも起こってしまう。だから、彼はただリラックスし、時間をかけていくべきだよ」
「F1では、少し遅いほうが最終的にはいい結果につながることもあるからね」
■今年もシーズン後半は2023年型マシン開発にシフトするハース
実際のところ、ライバルチームたちはすでにこれまでのレースで何度か改良パーツを投入するなど、シーズン中のマシン開発を行ってきている。だが、ハースはまだ2022年型マシンにそれほど大幅なアップグレードは導入していない。グロージャンの言う通り、このままの状態が続けば、ライバルたちとのパフォーマンス差は開いていくばかりだろう。
ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーは、今季中のマシンアップデートについて質問されると次のように答えている。
「夏休み前の最後のレースであるハンガリーGP(第13戦/7月31日決勝)に導入することを計画している。そして、その後は2023年型マシンに集中することになる」
シューマッハの叔父である元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、このシュタイナーのコメントを受けて次のように語っている。
「そのアップデートを成功させなくてはならない。そうでなければ、ポイント獲得は難しいだろう。彼には運も必要になるだろうね」。