マクラーレン・レーシングのCEOを務めるザック・ブラウンは、かつてマクラーレンで走ったことがあるアメリカ人ドライバーのマイケル・アンドレッティがF1に新規参入することを計画しているものの、それがうまくいくかどうかについて懸念しているようだ。
■F1新規参戦を目指すアイルトン・セナの元チームメート
1993年に故アイルトン・セナのチームメートとしてマクラーレンから13レースに出走した経験を持つアンドレッティが率いるアンドレッティ・オートスポーツは、アメリカを拠点とするモーターレーシング界のみならず、近年は電動フォーミュラマシンによる世界選手権であるフォーミュラEにも参戦している世界的なレーシングチームだ。
一時は既存のF1チームの買収に動いていたアンドレッティだが、それに失敗したこともあり、現在は自分たち自身でF1チームを立ち上げ、11番目のチームとして2024年からF1に新規参戦することを目指している。
■F1界は全般的に11番目のチーム誕生を歓迎せず
しかし、F1と統括団体であるFIA(国際自動車連盟)はアンドレッティF1チームに参戦許可を出すことには消極的なようだ。
F1に新規参戦するにあたっては2億ドル(現在のレートで約271億円)の保証金を支払う必要があるとされているが、既存のF1チームのいくつかは、チーム数が増加することで自分たちに分配される報酬のパイが小さくなることを懸念していると伝えられている。
こうした中、アンドレッティのF1参戦を全面的に支持しているアメリカ出身のブラウンは、『Sports Business Journal(スポーツ・ビジネス・ジャーナル)』誌からアンドレッティのF1参戦に向けた挑戦は「死んだ」のかと尋ねられると次のように答えた。
「死んでいないことを願うよ。私は死んだとは思っていない」
「だが、確かに多くの抵抗に直面しているようだ」
■アンドレッティにとっての打開策は保証金の増額?
ブラウンは、F1の人気が上昇していることを考えると、アンドレッティが現在設定されている2億ドルより高い金額を支払うことに同意すれば、この問題が解決する可能性もあると認めている。
「私が考える適正な額についてコメントするつもりはないよ。だが、私の意見では、コンコルド協定が結ばれたときから現在に至るまでの間にF1フランチャイズの価値は急速に高まってきている」
「最終的には、いくらが適正な額なのかを決めるのはF1だ。しかし、3年前と比較すれば、F1チームが持つ価値は、現在ではかなり高くなっているよ」
■アルピーヌのボスはアンドレッティ参戦に前向き
しかし、アルピーヌのチーム代表を務めるオットマー・サフナウアーは、F1に11番目のチームが誕生することには「賛否両論」があると認めながらも、アンドレッティの場合は前向きにとらえてもいいのではないかとの考えを明らかにしている。
「アンドレッティはモータースポーツにおけるビッグネームだし、アメリカのモータースポーツでは絶対的なビッグネームだ」
昨年までアストンマーティンのチーム代表を務めていた57歳のサフナウアーはそう語ると、次のように付け加えた。
「今はアメリカで行われる我々のレースも増えているし、アンドレッティのようなチームがあれば、おそらく収益全体のパイを大きくすることができると思うよ」。