ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、今週末にシルバーストン・サーキットで開催される今季のF1第10戦イギリスGP(7月3日決勝)に向けてはあまり過激なセットアップを施すことを避けて臨もうと考えているようだ。
歴代最多タイ記録となる通算7回のF1ドライバーズタイトル獲得を果たしているハミルトンだが、モントリオールで行われた前戦カナダGPの金曜フリー走行ではメルセデス2022年型F1マシンは「運転不能」だとコメントしていた。
だが、ハミルトンは最終的にはカナダGP決勝では3位でフィニッシュし、開幕戦バーレーンGPに次ぐ今季2度目の表彰台に上っている。
フリー走行ではほとんど目立つことのなかったハミルトンが予選と決勝で上位に食い込むことができた背景には、カナダでの天候コンディションの変化をうまく味方につけたという一因もあるだろう。
■シーズン後半はラッセルに実験を任せたいとハミルトン
だが、もう一つの理由は、メルセデスが“ポーポイズ現象”を回避する方法を必死に模索する中、金曜日のマシンセットアップにおいてかなり過激な実験を行っていたということもあるようだ。
ハミルトンは、この件についてチームメートであるジョージ・ラッセルの名前を出しながら、次のように語っている。
「シーズン後半には、ジョージが実験をすることができるんじゃないかな」
「僕たちはチームとして進歩しようと取り組んでいる。だけど、これからはもう少し慎重になるべきだし、あまり実験をしすぎないようにするべきだと思っているよ。なぜなら、そういうことをすれば、レース週末がかなり制限されてしまうからね」
ハミルトンにとって今週末のイギリスGPは自分のホームレースでもあり、母国のファンの前でできる限りのパフォーマンスを示すためには、あまりリスクを抱えるようなセットアップは避けたいということだろう。
■シルバーストンは自分たちに合うサーキットだとメルセデスのボス
とは言え、メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフは、この問題は一夜にして解決できるようなものではないとしながらも、チームは本当に明確な進歩を遂げ始めていると主張している。
「前回のモントリオールのように、今年の我々にはいくつかの明るい材料があった」
母国オーストリアの『Osterreich(エステルライヒ)』紙にそう語った50歳のヴォルフは、次のように続けている。
「シルバーストンには正しい方向に向かう改良パーツを持ち込むことになる。だが、私はあまり度を超して興奮しないようにしたいと思っているよ」
「いずれにせよ、このサーキットは我々のクルマに合っているはずなんだ」
■まだレッドブルやフェラーリと戦えるレベルにはないメルセデス
実際のところ、現在ドライバーズランキングとコンストラクターズランキングの両方でトップに立っているレッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は最近、カナダGP決勝でハミルトンが3位、ラッセルが4位となったことを受け、今後は現時点での直接的ライバルであるフェラーリ以上にメルセデスを警戒するべきかもしれないと示唆していた。
「それは初耳だね。もうちょっとでそれを光栄に思い、彼の楽観論を共有しそうになるところだ」
微笑みを浮かべながらそう語ったヴォルフは、次のように付け加えた。
「だが、まだそんな状況にはないんだ。我々はまだ勝てるだけのパッケージを手にしていない。だが、それを変えるために、できることはすべてやっているよ」。