今年はここまで苦戦が続いているルイス・ハミルトンだが、メルセデスの2022年型F1マシンが7月初旬にシルバーストン・サーキット開催される第10戦イギリスGP(7月3日決勝)までに大きな進歩を遂げることを期待しているようだ。
■母国のイギリスGPまでに改善を望むハミルトン
今週末にはバクーで第8戦アゼルバイジャンGP(12日決勝)が行われ、来週末にはモントリオールで第9戦カナダGP(19日決勝)が開催されることになっている。
だが、ハミルトンは、その2レースでメルセデスがレッドブルやフェラーリと対等に戦えるとは考えていないようだ。
7度F1王者となった実績を持つ37歳のハミルトンは、メルセデスが自分にとってのホームレースとなるイギリスGPまでにはマシンを改善してくれることを期待していると次のように語った。
「シルバーストンに行くときまでに、望むようなマシンを手にできることを願っているよ。フェラーリやレッドブルと戦うことができるマシンをね」
今シーズンは全く新しい技術レギュレーションが導入され、F1マシンがグラウンドエフェクト効果を持つものに変化しているが、メルセデスはそれにうまく対応できておらず、高速走行時にマシンが何度も上下に振動する“ポーポイズ現象”に苦しめられ続けているのだ。
そして、モンテカルロ市街地サーキットで行われた第7戦モナコGPでもマシンの振動に苦しめられたハミルトンは、レース後に次のように語っていた。
「それがなくなるのを楽しみにしているよ。僕の歯と顎はずっと動き続けていたんだ」
■マシンの振動問題解決がメルセデスの課題
伝えられるところによれば、モナコでのメルセデスF1マシンの振動はポーポイズ現象によるものではなく、バンプ(路面の凹凸)にマシンがうまく対応できていなかったことが原因となっていたようだ。
そして、メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、今週末のバクーでのレースでも同じ問題を抱えることになるかもしれないと次のように語っている。
「バクーでもモナコと似た困難に直面するかもしれない」。
そして、ハミルトンが期待するようにその問題がイギリスGPまでに改善されるという保証もないのが現実のようだ。
ハミルトンは昨年、再舗装されたシルバーストンで走行した際、「これまで経験した中で最もバンピーなコース」だと酷評していた。もし、その路面の状態が今年も昨年とあまり変わっていなければ、シルバーストンでも再び強い振動に苦しめられることになる可能性もありそうだ。
実際のところ、路面の凹凸があまりにひどくなったことで、シルバーストンでは路面改修を担当した業者を訴えており、その訴状には微小な凹凸がレーシングカーの深刻な振動を発生させる原因となっていると記されているという。
■振動対策により速さが失われているメルセデスF1マシン
スイス出身の元F1ドライバーであるマルク・スレールは、メルセデスは2022年型F1マシンに信じられないほど硬いサスペンション設定を施すことで、マシンが振動する現象に対処することを余儀なくされているのだと考えている。
「彼らは明らかにそれをある程度コントロールできている。だが、もちろん今の彼らはこの硬いセットアップによってコーナーで負けているよ」
『formel1.de』にそう語った70歳のスレールは、やはり路面の凹凸が少なくないバクーの市街地サーキットで行われる今週末のアゼルバイジャンGPに言及しながら次のように付け加えた。
「私には、メルセデスがバクーですごくうまくやれると想像することはできないよ」。