メルセデスの前モータースポーツ責任者であるノルベルト・ハウグは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は現在F1で進みつつある「世代交代」のまっただ中にいると考えている。
今季はここまでチャンピオンチームであるメルセデスが低迷しており、16年目のF1シーズンを迎えている37歳のハミルトンも4レースを終えた時点でドライバーズランキング7番手という近年では考えられなかったような位置に沈んでしまっている。
その一方で、2021年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をはじめ、そのフェルスタッペンと同じ24歳のシャルル・ルクレール(フェラーリ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)、そして22歳のランド・ノリス(マクラーレン)といった若手ドライバーが台頭してきているのも事実だ。
■ハミルトンがやる気を失うことはない
しかし、ハウグは、7回F1チャンピオンとなった実績を持つハミルトンがこのままモチベーションを失い、F1を引退してしまう可能性があるとは考えていないようだ。
「ルイスが興味を失うとは思わないよ」
ドイツの『Speed Week(スピードウィーク)』にそう語ったハウグは次のように続けた。
「彼は実際に二度タイトルを失っているんだ。ひとつは2007年で、それはチームのミスによるものだった。そして、2021年にはFIA(国際自動車連盟)の間違った決定によってね」
「フェルスタッペンがタイトルに値しないとは言わないが、ルイスのドライビングパフォーマンスはF1タイトルに釣り合うものだし、今は8回目を狙っている。もちろん、彼はまだそれを達成したいと思っているよ」
「だから、私はルイスがモチベーションを失うかもしれないという心配はしていないよ」
■今F1には世代交代が起こっている
そう語ったハウグだが、いまやハミルトンの後ろに若いドライバーがひしめきあっているのも確かだと考えている。
「しかし、我々はF1における世代交代を経験しているところだ」
「フェルスタッペンだけでなく、ラッセル、ノリスがいる。イモラでやったようなミスを頻繁に犯さなければルクレールもね」
■世代交代の象徴がハミルトン対ラッセル
また、ハウグと同じドイツ出身の元F1ドライバーであるラルフ・シューマッハも現在のF1では世代交代が起こりつつあると考えており、そのひとつの例がメルセデスにおけるハミルトン対ラッセルだと見ているようだ。
「ハミルトンは確かにまだトップドライバーだが、そのキャリアにおいて、もはや自分のドライビングスタイルを変えようとは思わない時期に来ているのも確かだ」
『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にそう語ったラルフ・シューマッハは次のように付け加えた。
「ラッセルはもっと頭が柔らかく、自分が手にしているものを理解しているから、マシンを変えようとはしていない。彼にはただそのマシンを限界まで乗りこなす必要があり、彼にはそれができる。そして、ルイスはそこに苦労しているのだと私は思っている」
■メルセデスは2022年F1マシンの設計を間違えた
一方、ハウグはメルセデスが2022年型F1マシンで根本的な設計ミスを犯したのだと考えている。
「ライバルたちとは非常に異なって見える」
「冷却は全く異なる場所にある。だが、ダウンフォースを発生させるはずのクルマの下にある大きなエリアは、明らかに使えないんだ」。
そう述べた69歳のハウグはイモラで行われた今季のF1第4戦エミリア・ロマーニャGPに言及しながら次のように付け加えた。
「ラッセルが4位になったのは素晴らしかった。だが、現実はおそらくハミルトンの方が上だろうね」