メルセデスF1チームの代表兼CEOであるトト・ヴォルフが、今季のF1第4戦エミリア・ロマーニャGPが開催されたイモラ・サーキットで不本意な週末を過ごしてしまったルイス・ハミルトンに対して公に謝罪した。
■イモラで全くいいところがなかったハミルトン
ミハエル・シューマッハと並ぶ通算7回のF1ドライバーズタイトル獲得という大記録を持つハミルトンだが、先週末のエミリア・ロマーニャGP予選ではQ2で敗退、13番グリッドからスタートしたスプリントでは順位をさらにひとつ下げ、決勝は14番グリッドからのスタートとなってしまった。
そして、その決勝では2021年にF1タイトルを争った新F1チャンピオンのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に周回遅れにされるという屈辱も味わい、結局13位でチェッカーを受け、今季初めてノーポイントでレースを終えている。
ヴォルフは、ハミルトンが決勝でフィニッシュラインを通過した後、無線で次のように語りかけた。
「今日走るために君が必要としていたものについては申し訳ない」
「これ(メルセデス2022年型マシン)が運転できるようなしろものでないことはわかっている。我々はここから抜け出していくよ」
その後、オーストリア出身のヴォルフは、メディアにも次のように語っている。
「F1チャンピオンになるには十分ではない。我々に必要なのはクルマを直すことだけだ」
■メルセデスF1マシン最大の課題はポーポイズ現象への対応か
サイドポッドを極端に絞り込んだ特徴的な外観を持つメルセデスの2022年型マシンだが、最大の問題は非常に大きなポーポイズ現象(高速走行時にマシンが上下に振動する現象)を克服することができていないことのようだ。
ハミルトンが不調に苦しむ中、ここまでの4レースで4位、5位、3位、4位と比較的コンスタントな成績を残しているチームメートのジョージ・ラッセルも、現在のメルセデスF1マシンは身体的にも非常に過酷なものとなっていることを認めている。
「背中がすごく痛かったし、胸も少し痛かったよ」
「だけど、可能な限り最速のラップをするためには、こういう試練にも耐えなければならないんだ」
■チーム移籍など考えないとハミルトン
こうした中、今季からバルテリ・ボッタス(現アルファロメオ)に代わって新たなチームメートとなった24歳の若いラッセルに後れをとってしまっているハミルトンが、今後このままメルセデスで戦い続けることを受け入れられるだろうかと懸念している者もいるようだ。
例えば、1998年と1999年のF1チャンピオンであるミカ・ハッキネンは、37歳のハミルトンが今後チームを移籍する可能性さえあるだろうと示唆している。
しかし、ハミルトンはそうした見方に関して次のように主張している。
「子供の頃に尊敬していた人物のコメントをいくつか読んだよ」
「結局のところ、そうしたコメントは馬鹿げているし、見出しにするためのものだよ。僕にはほかに行きたいところなんてないよ」
■「ハミルトンは必ず立ち直る」とラッセル
一方、ラッセルはイモラでメルセデスには“ナンバー1ドライバー”や“ナンバー2ドライバー”を定めるというような方針はないと主張したものの、ハミルトンが事実上チームの“キャプテン”であることは認めている。
そのラッセルは次のように語り、今季初めてノーポイントでレースを終えたイモラでのハミルトンを擁護している。
「この週末は少しばかり沈んでしまったけれど、彼は必ず立ち直り、これまで以上に強くなるのは間違いないよ」
また、ヴォルフは、ラッセルがブラックリーを拠点とするチームの中で優位に立ち始めているようなことはないと主張している。
「全くそんなことはないよ」
「彼らのレースペースは似ているし、ルイスはDRSトレインの中で動きがとれなくなってしまっていたんだ」
何台ものマシンが前車から1秒差以内で続いていたことからDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)を利用してオーバーテイクすることができない状態に陥っていたハミルトンに言及してそう語ったヴォルフは次のように付け加えた。
「今日我々が目にしたのは、典型的なものではなかったよ」