FIA(F1統括団体である国際自動車連盟)は、F1のバジェットキャップ(チーム予算上限)の運用やエンジン開発の凍結を計画通りに推し進めていくことにしている。
■バジェットキャップの抜け穴は可能か?
最近、フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットが、ライバルチームたちが今年は1億4,000万ドル(約173億円)と定められているバジェットキャップをなんとか回避し、追加予算を使うことができるような方策を模索しようとしていることに対して懸念していることが報じられた。
この件について質問されたFIAの技術責任者を務めるニコラス・トンバジスは、イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』に次のように答えた。
「我々の第一の目標は、選手権をクリーンに保つことなんだ」
「現在のレギュレーションでは、それをチェックするためにもっと多くのリソースが必要となる。昔は、マシンの重量を量り、コースや排気量をチェックするだけでよかったが、今はそれだけではなく、各社が自国で行っていることまでチェックしなければならないんだ」
「しかし、我々にはフェデリコ・ローディが率いる有能なチーム(F1の財政ルール監督部門)がある。マッティアは安心していいよ。我々は状況をコントロールし続けるためにあらゆる手を尽くしているからね」
■クラッシュの修理費用を巡る攻防
また、メルセデスのトト・ヴォルフ(チーム代表)は、第2戦サウジアラビアGPが開催されたジェッダ市街地サーキットで起こったミック・シューマッハ(ハース)のようなクラッシュが発生した場合にはその巨額の修理費をバジェットキャップに含めるべきではないと主張していることについてもトンバジスは次のように語っている。
「いや、それは違う」
「もし私が事故を起こしてマシンを壊してしまったら、私は自分の休暇に使う費用を減らさなければならない。これまでずっとそうやってきているんだ」
「バジェットキャップには多くの例外規定がある。あまりにも多すぎて、その見直しが必要なほどだ。だが、それらによってもミックのような事故をカバーすることはできないよ」
■F1エンジン開発“凍結”はなぜ?
2014年シーズン途中までフェラーリのチーフデザイナーを務めていた経験を持つトンバジスはさらに、メルセデスエンジンのパワーが不足しているという報道があることは認識しているものの、F1はエンジン開発の“凍結”を計画通りに推し進めると主張している。
「第一に、現時点では4つのエンジンのいずれもが問題を抱えてはいない。性能も似たようなものだ」
「そして、我々が凍結について話し合ったとき、もしひとつがトラブルに見舞われたとしても、その問題を解決する方法をみんなで誠実に話し合うと定めたんだ。どこかが4年間も後方に沈むことを強いるつもりはないよ」
「確かに、長期間にわたってエンジンを凍結するのは理想的なことではない。しかし、メーカーがこれらのエンジンとともに2026年に導入されるエンジンの開発を維持し続けることは不可能だったから、そうせざるを得なかったんだ」
そう語ったトンバジスは、次のように付け加えた。
「エンジンにも(予算)上限を定めるのかということに関しては、その通りだ」