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なぜハースF1チームはマグヌッセンを呼び戻し、複数年契約をしたのか?

2022年03月10日(木)6:51 am

ハースF1チームは、2022年のF1世界選手権をミック・シューマッハと戦うチームメイトとして、デンマーク人のケビン・マグヌッセンと複数年契約を結んだと発表した。

通常、F1シートを失った多くのドライバーたちは復帰が難しくなるが、マグヌッセンは千載一遇のチャンスをつかみ取った。

■なぜマグヌッセンに電話したのか?

ハースF1チームは3月5日(土)にニキータ・マゼピンとの契約解除を発表し、ミック・シューマッハのチームメイトは突如空席となった。

何人かのドライバーの名前が挙がっていたが、チームとしては木曜日からバーレーンで始まるプレシーズンテストと、翌週からのF1開幕戦に出場するために、速やかにチームに馴染める者が好ましいことは明らかだった。

また、今年はレギュレーションが大きく変わることもあり、特に序盤は小規模チームにも大きなチャンスがあると考えられていることから、ルーキーよりも経験豊かなドライバーの方が望ましいだろう。

経験豊かなドライバーで候補に挙がっていたのは、昨年までアルファロメオに所属していたアントニオ・ジョビナッツィ、現在アストンマーティンのリザーブドライバーを務めているニコ・ヒュルケンベルグ、そして2020年までハースに在籍していたケビン・マグヌッセンだった。

ハースはフェラーリとの繋がりも強いことから、今年はフェラーリのリザーブドライバーを務めているアントニオ・ジョビナッツィを起用する案もあったが、最終的には実現しなかった。

ヒュルケンベルグとマグヌッセンで考えると、チームに長年在籍していたマグヌッセンの方がすぐに顔なじみのチームスタッフと働くことができるため有利だ。

また、テスト兼リザーブドライバーのピエトロ・フィッティパルディという案も出ていた。フィッティパルディは、2020年のバーレーンGPでクラッシュしたロマン・グロージャンの代役として2戦出場した経験があるが、チーム首脳陣はもっとF1での経験が必要だと考えたようだ。

こうしたことから、チーム代表のギュンター・シュタイナーはベテランのマグヌッセンに電話をし、出場可能かどうかを確認した。

■21年は22年の開発に全集中、ラインナップも理想型に

マグヌッセンは、多額の資金を持ち込んだルーキーたちに2021年のシートを奪われることになり、2020年末にF1から去ることになった。

予算が少ないハースF1チームは、新レギュレーションが始まる2022年に飛躍するためには多くの開発費用が必要だったために、2021年は多額の資金をもたらす2人のルーキーを獲得する必要があったのだ。そして、2021年はマシン開発をせず、全てのリソースを2022年のマシン開発に投入し賭けていたのだ。

経済的な安定を得たチームは、資金力のあるルーキードライバーから選ぶ必要はなく、経験豊かなドライバーを選ぶことができる。マグヌッセンなら、チームにも馴染みがあり、経験豊富なこともありマシン開発のフィードバックは貴重で、2年目のミック・シューマッハの良い指標にもなるため、チームとしてはこれ以上ない最善の選択だったと言える。

結果的に、2022年はシュタイナー代表の理想としていた、経験豊富なマグヌッセンと若いミック・シューマッハというラインナップが完成した。

■なぜマグヌッセンと複数年契約?

ハースF1チームが、経験豊富なマグヌッセンと単年契約ではなく複数年契約を結んだことは、持参金を持ち込むペイドライバーしか選択できない状況ではなく、財政面で安定している証拠でもある。

もちろん、チームとしてシーズンが終わった時に良い結果を残していれば、ランキングに応じてF1から多額の報奨金が支払われるため、マグヌッセンの経験が必要だったのだ。

■マグヌッセンは長期契約をしやすかった

ではマグヌッセンの立場としてはどうか?

マグヌッセンはまだF1でやり残したまま「子供の頃からの夢」から引き離されていて、未練があったのは明らかだった。

しかし、夢だけでは生き残れない。マクラーレン、ルノー、そしてハースと渡り歩いてきて、ベテランとなった今、F1ではシートをつかみ取り、キープすることが非常に難しいという現実も知っている。

F1に復帰するチャンスが目の前に出てきた時、チームが2020年当時よりもルーキーたちが持ち込んだスポンサーのおかげで資金が豊富で、中団争いができるだけの予算があることは理解していた。

そして、チームが経験豊かですぐに加入できるドライバーを求めていたことから、2023年のシートを気にせずマシン開発に専念できる複数年契約の交渉がしやすい状況となった。

マグヌッセンとしても慣れたチームからのF1復帰となり、複数年契約も手に入れることができ、最高のF1復帰が実現したのだ。

2022年の注目すべきポイントがこれでまた一つ増えたことになる。果たして強いハースは戻ってくるのだろうか?

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