RAF(ロシア自動車連盟)が、F1やほかのカテゴリーでロシア国籍ドライバーを排除する動きがあるのは「差別」ではないかと疑問を呈した。
■マゼピンはF1に残ることができるのか?
ロシアのウクライナ侵攻により、すでに今年のF1ロシアGPはキャンセルとなっている。F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、ハースに所属するロシア人ドライバーのニキータ・マゼピンは“中立”の立場でF1参戦を続けることはできるとしたものの、ハースのF1マシンやドライバーのレーシングスーツなどにロシアを象徴する文言や色を施すことは禁止している。
実際のところ、現在ハースのタイトルスポンサーを務めている『ウラルカリ』は、マシンにロゴが表示されないこと、またロシアからの送金ができなくなることなどの状況を受け、F1からの撤退を余儀なくされるものと考えられている。
もしそうなれば、ウラルカリの支援によってハースのシートを獲得したマゼピンがチームにとどまる可能性も非常に小さいと考えられている。
■イギリスはマゼピンの出走を認めず
さらに、FIAでは条件付きながらロシア人ドライバーの参戦を認めることにしたものの、その後イギリスのモータースポーツ統括団体である『Motorsport UK』が、今季の第10戦に位置づけられているF1イギリスGPでロシア人ドライバーが走ることを認めないという決定を下したことが明らかとなった。
『Motorsport UK』の会長を務めるデビッド・リチャーズはこれに関して次のように語った。
「この決定は、イギリス政府および各国のスポーツ運営団体と十分に協議し、この危機への一方的な反応として行われたものだ」
「この完全に不当なウクライナへの侵攻を停止させるために、我々が持つあらゆる影響力を活用することが我々の義務なのだ」
■ロシア人排除は「差別」だとロシア自動車連盟
だが、RAF会長のビクトル・ニコライェビッチ・キリャノフは、「ロシアのアスリートとロシアのモータースポーツの利益を保護するため」には、できることは何でもする用意があると主張している。
また、RAFはFIAが「差別」に対するポリシーを遵守しているかどうかは疑問だとする声明を発表している。
しかし、興味深いことに、今週行われたFIAの内部組織である世界モータースポーツ評議会では、RAFを除名しないことが決議されている。
こうした中、かつてトロロッソ(現アルファタウリ)やレッドブルで戦った経験を持つロシア人ドライバーのダニール・クビアトは、ウクライナの状況は「恐ろしい」ものだと受け止めているものの、「スポーツは政治とは切り離すべきだ」と次のように語っている。
「ロシアの選手やチームが世界大会に参加できないようにすることは不公平な解決策であり、スポーツが原則的に教えていること、すなわち団結と平和に反するものだよ」
■現在のロシア対策は意味がないとエクレストン
一方、元F1最高責任者のバーニー・エクレストンは、デビッド・リチャーズが率いる『Motorsport UK』にシルバーストン・サーキットで行われるイギリスGPにロシア人ドライバーのマゼピンが参加することを禁止する権限があるかどうかは疑問だと『AFP通信』に次のように語っている。
「イギリスGPが開催されるときに彼(マゼピン)がハースの契約下にあるのであれば、彼はレースができる」
「仮にマゼピンが走らなくても、誰にも何の影響もないことだ。彼を走らせないことでプーチンを罰することにならないのは明らかだよ」
エクレストンはさらに、今年のロシアGPをキャンセルしたFIAの判断にも疑問を呈している。
「私の知る限り、ロシアでは戦争は起こっていないわけだから、もし開催したとしても誰にとっても影響はないよ。誰にも全く影響を与えないだろう」
そう語った91歳のエクレストンは次のように付け加えている。
「スポーツでロシアを罰しようとするこの考え方は、プーチンを罰することには全くならない。レースは彼にとって重要なものではないし、彼に不利な影響を及ぼすことなどないよ」