マクラーレンの技術トップが、2022年にはF1において違法な技術が使用されないようにF1技術レギュレーションに則った適正な管理が必要だと語った。
2022年のF1はこれまでとは大きく異なる技術レギュレーションのもとで戦われることになるが、この新ルールにより、マシンの外観も大きく変わることになる。
例えば、これまでの13インチホイールに替えて18インチホイールが導入され、公式タイヤサプライヤーであるピレリが供給するタイヤはより扁平率の小さなものとなる。
空力面も主にタービュランスと呼ばれる乱気流の発生を抑えるための改善が加えられ、シャシー自体がダウンフォースを生むグラウンドエフェクトマシンとなり、フロントウイングやリアウイング、その他の空力パーツはより簡素化されることになる。
なお、2021年7月にイギリスのシルバーストンで公開された2022年型F1マシンの基本デザインモデルにははっきりと組み込まれていなかったものの、2022年もリアウイングにはDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)が設けられることになるようだ。
ともあれ、F1マシンの重量がさらに増加することもあって、これまでの走行データなどはほとんど参考にならないことから、どのチームも現時点ではコンピュータによるシミュレーションなどを通じて、手探りでマシン開発を進めているところだ。
ハイブリッド方式の現行F1エンジンが導入されてからは長くメルセデスによる独占状態が続いていたが、2021年にはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が初のF1チャンピオンとなり、8年ぶりにメルセデス以外のチームからチャンピオンが誕生している。
今年もメルセデスとレッドブルが全体をリードしていくことになるだろうと予想している者も少なくないが、大幅に技術レギュレーションが変わることから、チームの力関係に大きな変化が生じる可能性もある。これまで中団もしくは下位に沈んでいたチームがこれを大きなチャンスととらえているのも確かだ。
近年、F1の技術レギュレーションは非常に厳しく制限されており、ライバルたちに大きな差をつけられるだけの革新的な手法を講じるのはかなり難しくなっているのは事実だ。しかし、そうした中にあってもチームたちはライバルたちを出し抜こうとさまざまな手法を探っている。
例えば、昨年は大きくたわむウイングが問題視され、シーズンの途中で検査基準が厳しくされるといった事態も発生していた。これは技術ルールに規定された検査にはうまく適合していたものの、実際の走行時には大きくたわむ特性を持った素材や仕組みを用いたものだと考えられており、こうしたことを受けて今年はウイングの検査基準がさらに厳しくなるという。
マクラーレンのテクニカルディレクターを務めるジェームズ・キーは、こうした問題について母国イギリスの『Independent(インデペンデント)』に次のように語っている。
「確かに弾性に関してはより敏感になってきたと思う」
「このところ、フレキシブル(変形しやすさ)をいかにうまく管理するかということが議論されている。フレキシブルな部品と言うのではなく、曲がって違いを生み出すことができる部品と言った方が正確かもしれないがね」
「いくつかの検査はさらに厳密になると思う。例えば、リアウイングのテストは少し厳しくなるだろうね」
「フロントウイングも同様だ。22年のフロントウイングは非常に大きくなるが、剛性に関する厳しいガイドラインが設定されている。だから、常にいくつかのトリックは出てくると思うが、簡単に攻略できるようなものではないと思うよ」
マクラーレンでもライバルたちに差をつけるために取り組んでいくつもりだとしたキーだが、違法なトリックが横行するような事態となるのを避けるためにも、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)はこれをうまく管理していく必要があると考えている。
「2022年にはさまざまな新しいツールが登場する。おそらく、何らかの問題が発生するのは間違いないだろう。しかし、それはチームやFIAが無視するようなものではないよ」
これまで、フォース・インディア(現アストンマーティン)、ザウバー(現アルファロメオ)、トロロッソ(現アルファタウリ)などでキャリアを積み、2019年からマクラーレンの技術部門を統括しているキーはそう語ると、次のように付け加えた。
「それはかなり明確な領域であり、適正に規制するために注意を払う必要がある」