レッドブル首脳のヘルムート・マルコは、かつて自分たちのチームセバスチャン・ベッテルがついにアストンマーティンで自分がナンバー1ドライバーだということを示したと考えているようだ。
レッドブルのドライバープログラム責任者であるマルコは、ベッテルの才能を見いだし、10代でF1にデビューさせた人物だ。ベッテルはトロロッソから順調にレッドブルに昇格すると、その後2010年から2013年にかけて4年連続でF1チャンピオンに輝く活躍を見せたことは改めて書く必要もないだろう。
だが、ハイブリッド方式の現行F1エンジンが導入された2014年には新たにチームメートとなったダニエル・リカルド(現マクラーレン)のパフォーマンスについて行くことができず、ベッテルは翌年フェラーリへの移籍を決めていた。
しかし、結局フェラーリで通算5回目のF1タイトルを獲得することはできず、次第にチームとの関係もうまくいかなくなってしまったベッテルは2020年限りでそのシートを喪失。今年はアストンマーティン(旧レーシングポイント)で新たな挑戦をスタートさせている。
しかし、ベッテルのその挑戦は決して楽なものではなかった。特に序盤はチームオーナーの息子でもある若いチームメートのランス・ストロールに予選・決勝とも後れをとることが続き、開幕から4戦連続で1ポイントもとることができずにいた。
だが、市街地サーキットが舞台となった第5戦モナコGPで5位に入賞して今季初ポイントを獲得したベッテルは、同じくバクーの市街地サーキットで行われた第6戦アゼルバイジャンGPでは予選では11番手だったものの、決勝ではレッドブル時代の強さを彷彿させる走りを見せて2位表彰台を確保してみせた。
マルコは、バクーの表彰台の上に立ったベッテルは「我々が知っているベッテルだった」とドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に語り、次のように続けた。
「表彰台に上がった彼を見ることができたのはもちろんだが、何よりも彼のオーバーテイクを見ることができてうれしかったよ。ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)との戦いがそうだし、1周目もそうだった」
「比較的短期間でこれほどの改善を達成できたのをすごくうれしく思っている。ほかのサーキットでも同じ活躍ができることを期待しているよ」
一方、レッドブルは現在、人材の引き抜き問題なども加わってF1タイトル争いのライバルであるメルセデスとの関係がかなり緊迫してきている状況にある。
そしてマルコは、そのメルセデスと強い技術協力関係にあるアストンマーティンに対しても嫌みを言わずにはいられなかったようだ。マルコはチームオーナーのローレンス・ストロールを茶化しながら次のようにコメントしている。
「ベッテルがストロールのチームのナンバー1だ。パパはあまり喜んでいないだろうがね」