1997年のF1ドライバーであるジャック・ビルヌーブによれば、自分がこれまでに受けた質問の中で最も“馬鹿げた”ものは、どうしてF1ドライバーは自分のパフォーマンスが下り坂にさしかかったときにすぐに引退を決断しないのかというものだという。
ビルヌーブがそのコメントを行ったのは、2010年から2013年までレッドブルで4年連続F1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)に関する質問を受けた際のことだった。
ビルヌーブも、フェラーリから今年アストンマーティンに移籍したものの、ずっと苦しみ続けているベッテルを見るのは“悲しかった”と認めている。
だが、ベッテルは2021年のF1第5戦モナコGPではそれまでとは違う生き生きとしたドライビングを見せて5位に入賞。今季初ポイントを手にしている。
「自分の中に燃えるものがなければ、モナコではうまくやれないものさ」
「彼(ベッテル)はあそこで違いを見せたよ」
『Motorsport-Magazine.com』にそう語った50歳のビルヌーブは、昨年はメルセデスF1マシンをコピーしたことで“ピンクのメルセデス”と呼ばれるほどのパフォーマンスを見せていたレーシングポイントだが、アストンマーティンとチーム名が変わった今年はそれが災いしているのだと次のように続けた。
「クルマは期待していたようなものになっていない。古いメルセデスは新たなルールではうまく機能できていないし、あのチームでは開発はできないからね」
モナコで5位となったことで、チームメートのランス・ストロールに1ポイント差をつけてランキングで逆転したベッテルだが、F1関係者の中にはベッテル昨年限りでF1を引退した方がよかったと考えている者もいる。
しかし、ビルヌーブはそうした意見には反対だと次のように続けた。
「なぜだい? 彼はF1にいて、大金を稼いでいるよ。それは彼が4回F1チャンピオンになったこととは関係ないことだ」
「人々はいつもこう言うんだ。『ああ、彼は勝てない。もう辞めるべきだ』とね。だけど、それは実際の仕事なんだ。レースをするのは楽しいものだが、同時にそれは子供の教育費を払うために行う仕事でもあるのさ」
「もし、まだF1で走ることができ、戦うことが好きで、クルマを運転するのが楽しくて、しかもその過程で何百万ドルも稼ぐことができ、死ぬことだって怖くないなら、なぜ辞める必要があるんだい?」
「それは僕が受ける一番馬鹿げた質問だよ」、とビルヌーブは付け加えた。