先週末にバーレーンで行われた2020年F1第16戦サヒールGPは、バルテリ・ボッタスの今後のF1キャリアを左右するレースとなってしまったかもしれない。
●【決勝レース結果】F1第16戦サヒールGP タイム差、周回数、ピット回数
新型コロナウイルスに感染したルイス・ハミルトンの代役として22歳のジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)をサヒールGPでのチームメートに迎えたボッタス。
予選こそ僅差ながらラッセルを上回るパフォーマンスを見せてポールポジションを獲得したボッタスだったが、決勝ではスタートでラッセルにオーバーテイクを許すとその後はずっとその後ろ姿を見ながら走行することになってしまった。
最終的にはレース終盤にチームがラッセルのマシンに間違えてボッタス用のタイヤを付けるという致命的なミスを犯したことで、両者ともに大きく順位を下げてしまい、ボッタスは8位、さらにパンクのアクシデントにも見舞われたラッセルは9位という不本意な結果でレースを終えてしまった。
だが、それまではラッセルが初めてステアリングを握ったメルセデスの2020年型マシンでほぼ完璧な走りを見せていた一方で、31歳のベテランドライバーであるボッタスは完全にその影に隠れてしまう状態となっていた。
メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフは、ボッタスに覇気が見られなかったことについて次のように語った。
「彼や彼のチームとそのことについて話し合う必要がある。だが、確かに今日の彼に輝きはなかった」
「F1タイトルのゆくえが決したことで気が抜けてしまっていたのかもしれないが、私には分からない」
かつてザウバーやウィリアムズで活躍した元F1ドライバーのニック・ハイドフェルドは、サヒールGP決勝はボッタスのキャリアにとって重大な意味を持つものになったはずだと母国のテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイツ)』に次のように語った。
「いまやボッタスの市場価値は急速に下落しているよ」
「ああいう週末の後で彼がシートを失ったとしても私は驚かないね」
同じくドイツ出身の元F1ドライバーであるラルフ・シューマッハも同意見だ。
「ボッタスは問題を抱えたね」
そう語ったラルフ・シューマッハだが、「しかし、それはハミルトンも同じだよ」と付け加え、今回のラッセルの活躍は7回のF1王座を手にしたハミルトンの本当の力量にも疑問を生じさせるものだったと示唆している。
F1関係者の中には、まだ来季以降の契約を結んでいないハミルトンとの交渉の際に、今回のラッセルのパフォーマンスを引き合いに出すことでハミルトンにプレッシャーをかけていくことになるだろうと考えている者もいるようだ。
だが、ヴォルフはハミルトンの成功はF1マシンが優れたものだったことだけで成し遂げられたわけではないと次のように主張している。
「彼がこれほど勝てるのは、最高のドライバーが最高のクルマに乗っているからだ。常にそのコンビネーションによるものなんだ」
「F1において素晴らしい将来が期待される若者が驚異的な走りを見せたからといってそれによって目をくらまされるようなことがあってはならないよ。依然としてルイスが指標であることに変わりはないんだ」
いずれにせよ、ラッセルの将来が大きく開ける可能性が生じた反面、ボッタスの将来に暗雲が垂れ込め始めてきたのは間違いないようだ。
ボッタスの大先輩にあたる元F1ドライバーのJ.J.レートは母国フィンランドの『Iltalehti(イルタレティ)』に次のように語った。
「ボッタスの株は暴落したね。メルセデスが将来に向けてジョージ・ラッセルを選択することは間違いないよ」
「今日、バルテリはより優秀な者に直面したということだ。ハミルトンが近年力のあるチームメートとより厳しい戦いをしてこなかったのは残念だよ」
「今後彼がそういうチームメートを得られればいいと思うし、以前私はそれはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)じゃないかと言ったが、今ではラッセルもそれに当てはまるね」
「メルセデスも間違いなく、もっといいスーパーチームにするにはどうすべきかを考えることになるだろう。バルテリには数シーズンにわたってそのチャンスがあったが、彼はめったにハミルトンに勝つことができなかった。バルテリは自分のレベルがどれほどのものかを示していたんだ」
一方、ヴォルフは新型ウイルス感染が確認されたハミルトンの容体次第では、今週末に行われるF1最終戦アブダビGP(13日決勝)でもラッセルがメルセデスで走る可能性はあると次のように語っている。
「今日のルイスはいくぶん具合が良くなっている。だから、もし彼が検査で陰性となれば、彼が走ることになるだろう。そうでなければジョージになるよ」