マクラーレンのチーム代表を務めるアンドレアス・ザイドルが、F1をもっと面白くするためにはF1オーナーのリバティ・メディアや統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が介入して何らかの手を打つべきだと語った。
2014年にハイブリッド方式の現行F1エンジンルールが導入されて以来メルセデスが圧倒的な力を発揮。2019年まで6年連続でF1タイトルを独占している。
今季も第7戦が終わった時点では第5戦イギリスGPで唯一レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンに勝利をさらわれたものの、それ以外の6戦はすべてメルセデスが勝利を収めていた。
ところが、先週末に行われた第8戦イタリアGPではその様相が一変。アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーが優勝し、2位と3位にはマクラーレンのカルロス・サインツとランド・ノリスが入るという誰も想像しなかった結果となった。
ただ、モンツァで行われた今年のイタリアGPがそういう結果になったのには“運”が大きな影響をもたらしたためだった。
まず、レース前半にトップを快走していたルイス・ハミルトン(メルセデス)がセーフティカー導入時にまだピットインが認められない状況だったにもかかわらず、誤ってピットに入ってしまったことで10秒のストップ&ゴーというペナルティーを科されたこと。さらに、セーフティカーが解除された直後に起きたシャルル・ルクレール(フェラーリ)のクラッシュによりレースが赤旗中断となったことで有力ドライバーたちが後方に下がってしまうという状況となったためだ。
つまり、今後のレースでもモンツァと同じような状況が起きない限り、やはりメルセデスがこれからも常に表彰台に上ることは間違いないだろう。
「メルセデスがこれほど強いのは彼らの何年にもわたるハードワークの結果であり、彼らがそういう位置にいるのにふさわしいのは確かだ。だが、残念ながらそれによってレースが退屈なものになってしまっている」
『motorsport-total.com』にそう語ったザイドルは次のように続けた。
「だから、現時点ではモンツァのように何かが起きるのは間違いなくいいことだよ」
「そして、私は2022年から予算に天井が設けられ、新技術レギュレーションが導入されることでサーキットではみんながもっと接近するようになるはずだと強く確信している。そしてF1に新たな常態が生まれるだろうと期待しているよ」
確かに、ザイドルが言うように2022年にはF1の様相がこれまでとは違ってくる可能性はある。だが、少なくとも2020年シーズン後半も、そして2021年シーズンもチームの力関係に大きな変化が生じることはないだろう。それは、新型コロナウイルスのパンデミックによりチームの財政的負担が大きくなったために2021年には2020年型をベースとするF1マシンで戦うことになるためだ。
ザイドルは、今考えられる対策はひとつしかないと次のように続けた。
「今後1年半に行われるレースをさらに面白いものにするための唯一の手段はメルセデスを人為的に遅くするか、あるいはリバースグリッドのようなほかの条件を創り出すことしかないと私は信じているよ。それが今の我々にとっての現実なんだ」
「もっとピットストップを増加させるために違うタイヤを開発したところで問題の解決になるとは思わない。なぜなら、その場合メルセデスはフルスロットルで最初の10周を走ればいいだけなんだ。そうすれば最初のピットストップを終えたときに彼らは前でコース復帰できるんだからね」
そう語ったザイドルは、自分自身はレースを面白くするために人為的な介入をすることは好きではないが、現時点ではそういう手段をとるべきだろうと次のように結んでいる。
「私はそれについてメルセデスがFIAあるいはF1(オーナー)と話し合うべきだと思っている。もし彼らがそうしたものを受け入れるつもりがあるならね」