7度F1チャンピオンとなったミハエル・シューマッハの弟であり、自身もかつてF1ドライバーとして活躍したラルフ・シューマッハは、フェラーリにおけるセバスチャン・ベッテルとシャルル・ルクレールの立場が逆転することになるかもしれないと考えている。
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■対照的だったイギリスでのベッテルとルクレール
先週末にシルバーストン・サーキットで行われた今季のF1第10戦イギリスGPで3位表彰台に上ったルクレールは、その後「僕のF1キャリアにおいてこのレースが一番楽しめたよ」と語った。
実際のところ、ルクレールと誕生日が1か月も離れていない同じ21歳のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がシルバーストンで演じたバトルは非常にスリリングなものだった。
かつてウィリアムズやトヨタで活躍した44歳のラルフ・シューマッハはテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイツ)』に次のように語った。
「2人の若いドライバーたちはうまく戦えているが、年上の者はそれができていないよ」
シューマッハが言及した年上のドライバーとはもちろん32歳のベッテルのことだ。
■またもミスを犯したベッテル
イギリスGP決勝でフェルスタッペンにオーバーテイクを許したベッテルは、その直後に順位を取り戻そうとしたものの勢い余ってフェルスタッペンに追突。これでフェルスタッペンは表彰台を逃してしまった。
その追突でフロントウイングにダメージを負ってピットインせざるを得なかったベッテルは、10秒ペナルティーを受けたこともあり、16位でのフィニッシュという惨たんたる結果となってしまった。
ルクレールが表彰台に上る準備をしている頃、対照的にベッテルはレース後のパルクフェルメでフェルスタッペンに歩み寄り自分のミスを詫びていた。
■カナダショックがスランプの引き金に?
F1を代表する名門チームであるフェラーリにおいてベッテルにのしかかるプレッシャーが非常に大きいのは間違いないだろう。それでも、ベッテルはペナルティーを受けて優勝を逃すことになった第7戦カナダGPまでは第2戦バーレーンGPを除いて常にチームメートのルクレールよりはいい結果を残してきていた。
だが、カナダGPでの一件でベッテルの中で何か変化が起きたのか、続く第8戦フランスGP以降の3レースでは予選決勝ともにルクレールに負けてしまっている。
イギリスGPをノーポイントで終えたことで、ドライバーズランキング4番手のベッテルと5番手ルクレールの差はわずか3ポイントに縮まってきており、このままではルクレールにランキングで逆転を許す可能性もありそうだ。
「セバスチャンは(フェラーリでの)ナンバー1待遇を失わないよう気をつけなくてはならないよ」
同郷の後輩ドライバーにあたるベッテルについてそう語ったシューマッハは、次のように付け加えている。
「彼はそれをもうほとんど失いかけているからね。シャルルがそれを難しくしているんだ」
■「ベッテルは立ち直る」とハミルトン
しかし、今年の勝利でイギリスGP歴代最多勝利記録保持者となったルイス・ハミルトン(メルセデス)は、ここ数年最大のライバルとしてベッテルと競い合ってきたベッテルに関してドイツの『DPA通信』に次のように語った。
「彼はこのスポーツにおいて最高レベルのひとりだし、また強くなって戻ってくるよ。僕はそう確信している」
「優れたアスリートはそうして見せるものだし、彼もそのひとりだよ」
■重要なのはミスを犯さないことだとビノット
これまでずっとベッテルがフェラーリのナンバー1ドライバーだと公言してきたチーム代表のマッティア・ビノットは、イギリスGP後に次のように語っている。
「セバスチャンはミスを犯したし、それは彼自身がよく分かっている。残念だと思うし、我々は話し合うことになる」
「だが、ミスを犯したとは言え、セバスチャンは自分自身のことを非常によく分析できる全くのプロフェッショナルなんだ」
「我々は彼に自分の力を最大限に発揮できるクルマを与えなくてはならない。彼の好みにあったセットアップを施してね」
そう語ってベッテルを擁護したビノットだが、次のように付け加えることも忘れなかった。
「彼に関しては、ああいうミスを犯さないことが一番大切なのは明らかだ」