フェラーリではF1カナダGPでセバスチャン・ベッテルに対して与えられたペナルティーに対する異議申し立てを見送ることになった。
フェラーリは当初カナダでのベッテルに対する裁定に対し異議申し立て手続きを進めることにしていたが、そのやり方でペナルティーの取り消しを実現するのは困難だとの結論に達したようだ。
■フェラーリはペナルティーの「再検討」を要求か
だが、F1競技規則には、もし新たな証拠が見つかれば競技委員が行った裁定を「再検討」することができるという項目もある。どうやらフェラーリはその条文をもとに、ベッテルのペナルティーに関して“見直し”を求めるという方法に切り替えることを検討しているようだ。
フェラーリの渉外担当者は次のように語っている。
「我々は異議申し立ての意向は取り下げ、再検討の権利に関して評価を行っているところだ」
■いずれにしてもペナルティーが覆る可能性は小さい
だが、その手法をとったとしても、カナダでの裁定が覆る可能性は小さいと考えられている。新たな証拠として採用される可能性があるのはビデオ映像やテレメトリーデータなどになるはずだが、「再検討」を行う価値のある新証拠が出てくるとは考えにくいためだ。
オーストリアのテレビ局『ORF』でコメンテイターを務めるエルンスト・ハウスライトナーは、「こうした新たな証拠があるとは思えないよ」と語っている。
元F1ドライバーであり、現在もGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の会長を務めるアレックス・ブルツも、カナダでのベッテルに対する裁定は正しかったと次のように語っている。
「あのペナルティーが不当だったと考えている人たちは間違っているよ」
だが、ブルツは、問題は現在のF1がさまざまなルールによって過剰に規制されているところにあるのだと次のように付け加えた。
「我々はどんなことに対してもすべてルールが必要だと考えているし、そういう状態になってしまっているんだ」
■もっと重い罰が与えられる可能性もあるとメルセデス
一方、メルセデスF1チームを率いるトト・ヴォルフは、フェラーリが統括団体であるFIA(国際自動車連盟)に再検討を求めるのは間違ったやり方だと考えている。
ヴォルフはオーストリアの『Osterreich(エステルライヒ)』に次のように語った。
「ペナルティーをなかったことにするのは無理だよ」
「最悪の場合、競技委員たちがデータを見直した結果、もっと重いペナルティーが必要だと判断することもあるだろう」
「私はマッティア・ビノット(フェラーリ/チーム代表)と話をしたのだが、彼は100%ペナルティーではないと判断されるだろうと考えている。私は彼が100%間違っていると思っているよ」
「事実は、ベッテルがコースオフし、ミラーで確認した上でルイスを壁の方へ押しやったということだ。もしルイスがブレーキをかけなければ2人はクラッシュしていただろう。ペナルティーが下されたのはそれが理由なんだ」
「確かに、いろんな意見があるだろう。だが、我々のスポーツにおいては情けをかけるようなことはしないんだ」
イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』は、もしフェラーリがFIAに「再検討」を求める場合にはF1フランスGP(23日決勝)が行われる来週末までに正式手続きを踏む必要があると報じている。