フェルナンド・アロンソは、インディ500の予選に通過できなかった自分が他人のシートを金で買って決勝に出ることは「道義に反する」と考えていた。
そう語ったのはアロンソと同じスペイン出身のレーシングドライバーであるオリオール・セルビアだ。
CARTやインディカーで多くの実績を残した44歳のセルビアは今年チーム・シュタンゲ・レーシングからインディ500に挑戦。19番手で予選を通過している。
だが、マクラーレンではアロンソが予選不通過となったことを受け、世界3大自動車レース全てで勝利することを目指すアロンソのためにセルビアのシートを買い取ってインディ500決勝に出走させることを検討していた。
インディ500はF1などとは違い、エントリーはドライバーではなくマシンが基準となる。つまり、決勝で走る権利を持っているのは予選を通過した“マシン”であり、予選を通過できなかったドライバーがそのマシンに乗って決勝に出走することもルール上可能であるためだ。
セルビアによれば、マクラーレン・レーシングCEOのザック・ブラウンがアロンソにセルビアのシートを買い取ることができるかもしれないと語ったところ、アロンソ自らセルビアに電話をかけてきたのだという。
「そのことが話題となったその夜に僕はフェルナンドと話をしたよ」
母国スペインの『El Mundo Deportivo(ムンド・デポルティーボ)』にそう語ったセルビアは次のように続けた。
「僕に電話をかけてきた彼は、ものすごく率直だった。彼は僕にどう思うかと尋ねてきた。僕は、もちろん誰かが僕のシートを取り上げるなんていやだと答えたよ。だけど、僕も分かってはいたんだ。それは自分だけで決められないことだし、僕は自分がすべきことをするだろうとね」
「彼は、僕の、あるいは予選に通過したほかのどのドライバーのものであれ、他人のシートを取り上げるのは道義に反することだと考えていたようだ。そのことは彼がどれほどの人物かということを示すものだよ」
「マクラーレンは彼を走らせたかったし、彼だって3冠を狙いたかっただろう。だからもし彼がほかのクルマに乗ったとしても僕はそれを理解できたと思うよ。だけど、彼は倫理とモラルを示したんだ」
セルビアによれば、アロンソはシートを買うことで決勝で走ることが可能となるインディ500のルールには「驚いていた」という。
「彼は僕に言ったよ。“彼ら(インディカー)はどうかしているよ!”ってね」
そう語ったセルビアは次のように付け加えた。
「マクラーレンのようなチームがやってきて、“我々はマクラーレンだ。我々は自分たちに何ができるかを見せるためにここにやってきた”と言っていたわけだから、もしシートを買い取ったりしていたらすごくみっともなかったと思うよ」
だが、セルビアは同じスペイン出身のアロンソが2020年もしくはそれ以降もインディ500制覇に挑戦して欲しいと思っているようだ。
「マクラーレンと一緒だろうがそうではなかろうが、僕は彼がそうすることを望んでいるよ。もしマクラーレンとやるのなら、彼らはよく準備をして戻ってくるだろう」
「もしマクラーレンとではなければ、彼は自分が望むどのクルマにだって乗ることができる」
そう語ったセルビアは次のように付け加えた。
「マクラーレンが予選を通過できなかったのは、彼らがF1の方に集中し過ぎていたためだと僕は思っている。彼らはあまりにも準備不足のままここに来たし、奇跡は起きないものさ」