今季のF1第2戦バーレーンGPを終え、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)にのしかかるプレッシャーがさらに大きくなったのは間違いないだろう。
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■ベッテルをしのぐパフォーマンスを見せたルクレール
フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットは、シーズン開幕前に今年はベッテルを“優先”することになると語り、4度F1王者となった実績を持つベッテルを軸として今季のタイトル争いを展開していく計画であることを示唆していた。
だが、昨年ザウバーでF1デビューを飾り、2年目にしてフェラーリのシートを獲得した新星シャルル・ルクレールの登場により、そのチーム方針に変化が生じる可能性もありそうだ。
メルボルンで行われた今季のF1開幕戦オーストラリアGPではうまく今季型F1マシンの力を引き出せず苦戦に終わったフェラーリだが、レース終盤には明らかに5番手を走行していたルクレールの方が4番手のベッテルよりも勢いがあった。
ビノットもそのときはルクレールに対し、最後までその位置をキープするようにチームオーダーを出していたことを認めている。
そして、先週末のバーレーンでは週末を通じてルクレールがベッテルをしのぐパフォーマンスを見せ、予選では大差をつけて自身初ポールを獲得。
決勝ではスタートで順位を下げてしまったルクレールだが、その後本来のペースを取り戻し、メルセデスやベッテルをコース上でオーバーテイクすると、そのままギャップを開いていく強さを示した。
最後はマシントラブルで3位まで順位を落としてしまったルクレールだが、バーレーンでフェラーリを牽引したのはベッテルではなくルクレールだったことは確かだ。
■またもやミスで墓穴を掘ったベッテル
一方、昨年も速いクルマを手にしながらも自らのミスが重なってタイトル獲得を逃したと批判されていたベッテルだが、バーレーン決勝でもハミルトンにオーバーテイクを許して3番手に下がった直後に、ハミルトンから順位を取り戻そうと無理をしてスピンを喫し、いったんは9番手にまで順位を落としてしまうというミスを犯してしまった。
「去年のセバスチャンと同じだね」
2016年のF1チャンピオンであるニコ・ロズベルグは、母国ドイツのテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイツ)』にそう語ると次のように付け加えた。
「あれではF1チャンピオンにはなれないよ」
そのロズベルグもルクレールが先週末に見せたパフォーマンスには大いに感心させられたようだ。予選でポールポジションをとったルクレールは決勝でもファステストラップを刻んで見せており、もしあのエンジントラブルさえなければバーレーンはルクレールにとって「完璧」な週末となっていたはずだとロズベルグは付け加えている。
フィンランド出身の元F1ドライバーであるJ.J.レートも『Iltalehti(イルタレティ)』に対し、今後メディアの視線もルクレールの方に多く向けられていくだろうと次のように語っている。
「最大のテーマがルクレールの不運に関するものになるのは確かだ。だが、ベッテルはかなりひどかったよ」
「ベッテルは信頼を取り戻すためにもう少し頑張る必要があるね」
■フェラーリの本当のチャンピオンはルクレール?
昨年からベッテルに対する批判的な論調が多くなっているイタリアだが、イタリア最大の民放テレビ局『Mediaset(メディアセット)』はバーレーンGP後に次のように報じている。
「またもベッテルがプレッシャーに押しつぶされてしまった」
「赤いピット(フェラーリ)にいる本当のチャンピオンはモンテカルロからやってきた小柄な男のようだ」
そんな中、ビノットは「戦っているときにはああいうことも起こるものなんだ」と語り、最終的にバーレーンGPを5位で終えたベッテルのミスを擁護している。