ベトナムの首都ハノイの中心部に全長5.565km、22ターンのストリートサーキットが誕生し、2020年からF1ベトナムGP(仮称)が開催されることが正式に発表された。
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ベトナムはモナコ、シンガポール、アゼルバイジャンに続き4番目のストリートサーキットとなり、日本、中国、シンガポールに続き4番目のアジアでのレースになる。
F1のモータースポーツ部門は、サーキットデザイン会社で有名なティルケ氏と協力し、既存の道路と専用の路面を組み合わせてセミ・パーマネントコースを設計した。
2020年4月、全貌が明らかになる。
■世界中のサーキットからインスピレーションを得た
F1には世界中の素晴らしいサーキット、ターン、コーナーが溢れているが、ベトナムで新しいサーキットを作るにあたり、それらからインスピレーションを得ることは理にかなっていると言えるだろう。
すでにアメリカはテキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズには、イギリスのシルバーストーンで有名な「マゴッツ、ベケッツ、チャペル」や、イスタンブールのターン8のような大きく回り込むコーナーなどが実装されており、ドライバーの評価も高い。
ベトナムでも同じ戦略が用いられ、ミーディン国立競技場の付近の街の西側に作られる新ストリートサーキットにも適用されることになった。その目的は、都市の地形を活かしつつ、評価の高いパーマネントコースを取り込んでストリートサーキットに融合させることで、特徴的なハイブリッドコースを創り上げることだった。
また、ストリートサーキットにありがちな90度ターンばかりのコースではなく、抜きつ抜かれつの激しいバトルが見られるようなレイアウトを目指した。
■ターン1から2は「ニュルブルクリンク」
ターン1から2は、ドイツのニュルブルクリンクの1コーナーを模した。
2006年には、ファン・パブロ・モントーヤが長いストレートでスリップストリームを使ってジャンカルロ・フィジケラをターン1のブレーキングでパスしていたのを覚えているファンもいるだろう。
■ターン12から15は「モナコ」
ターン12から15までは多くのファンにとって馴染みがあるかもしれない。これはモナコのターン1からマスネへと駆け上がる有名な上り坂をイメージしている。
■ターン16から19は「鈴鹿サーキット」
ターン16から19の連続コーナーは、向きを急に変化させなければならない鈴鹿サーキットの象徴的な「S字」を思い起こさせる。
■ターン20から22は「マレーシア」
ターン20から22の最後の3つのコーナーは、マレーシアのセパンサーキットにある高速左右ターンからタイトに進入していくセクションからインスピレーションを得ている。
この最終コーナーは、トリッキーでチャレンジングな設計となっている。1コーナーでオーバーテイクを仕掛けようとするドライバーがスリップストリームを使うために接近するが、ミスを誘発する難しいコーナーだ。
■低・中・高速コーナー、長い直線がそろったサーキット
このサーキットでは、マシンの隊列を見るのではなく、ドライバースキルを限界まで引き出しアタックする場面を見られることが期待されている。
低速ヘアピン、テクニカルな低速と中速コーナーが組み合わさった高速S字コーナー、アクセル全開のコーナー、長いストレートまでが取り込まれている。長いストレートの1つは長さ1.5kmで、スピードトラップでは335km/hを予想している。
最初の2つのセクターは、低速ターンと長いストレートが多くなる一方、最終セクターはコーナーリングが重要になる。
長いストレートはチームにとってチャレンジングになるだろう。ストレートスピードを最大限に高めつつ、ダウンフォースを生み出してコーナーリングでアタックし、さらにライバルからのアタックを防御できるよう、ウイングの角度はバランスを見出す必要がある。
興味深いこととしては、ピットレーンの入口と出口は最終コーナーと最初のコーナーを通る必要がないため、その分ピットストップの時間が短縮され、複数回のピットストップ戦略が可能になると予想できる。
■2020年までに・・・
次なるステップとしては、すでに現地を複数回訪れているFIA(国際自動車連盟)のF1レースディレクターであるチャーリー・ホワイティングとF1の代表団が、サーキットの安全性を確認し、F1開催要件のグレード1を満たしているとの認められた後、ホモロゲーションライセンスが付与される。
2020年の開催までそれほど多くの時間があるわけではないが、ストリートサーキット誕生に向けて計画はすでに実行されている。
■【動画】コース予想図で解説
■【動画】現在のハノイ市街地をトゥクトゥクの乗って解説