元F1ドライバーのミカ・ハッキネンが最近多発しているピット作業ミスに対する懸念を明らかにした。
■2戦連続で重大なピット作業ミスが発生
今季のF1開幕戦オーストラリアGPが開催されたアルバート・パーク・サーキットでは、決勝でハースの2台がいずれも左リアタイヤの装着に失敗してリタイアとなるという珍しい事件が発生。
そして第2戦が行われたバーレーンでは、フェラーリのキミ・ライコネンにフリー走行2回目と決勝でやはりタイヤ装着ミスが起きていた。しかも決勝中のピット作業ではまだ左リアタイヤがはずせない状態であったにもかかわらず、ライコネンにはピットアウトしてよいというグリーンライトが示されていた。
このためライコネンはクルマを発進させたが、その際に左リアタイヤをはずそうとしていたクルーをはねてしまい、そのメカニックは足などを骨折する大けがを負ってしまったのだ。
■事故のリスクが増しているピット作業
1998年と1999年にマクラーレンでF1チャンピオンに輝いたハッキネンは次のように語った。
「ピットクルーを務めるメカニックたちが直面している挑戦を過小評価してはならないよ」
ハッキネンが現役だったころなどにはピットクルーのひとりが“ロリポップ”と呼ばれる合図用の標識を使ってドライバーに発進してよいことを伝えていたが、現在ではそれが“トラフィックライト”と呼ばれる信号方式に変わっている。これは人間がスイッチを入れるのではなく、システムが自動的にタイヤ交換終了を判断してグリーンライトを点灯させる仕組みになっている。
こうしたシステムの導入もあって、3秒以内でタイヤ交換を行うことが珍しくないという状況にある現在においては、こうした事故が起こるリスクが高くなっているのは確かだとハッキネンは考えている
■FIAも調査実施を明言
「今年導入されたハロなども含め、F1における安全がどれほど重要かということを考えれば、チームやFIA(国際自動車連盟)はいま一度ピットストップに関しても検討すべきだよ」とハッキネンは主張。
実際のところ、F1競技委員長を務めるFIAのチャーリー・ホワイティングは、バーレーンGP終了後に最近のピットでの事故や事件について綿密な調査を行うことを明らかにしている。
では、現在のピットストップにはどういう改善が考えられるだろうか?
■最終的には人が判断することが重要
「それ(ピットストップ)も本当に重要な見どころのひとつなんだ。だから、私はそれがなくなってしまうことは望んでいない。だが、そのうち自動システムを使うのが正しい方向性なのかどうかを検討すべきときに来ているんじゃないかな」
そう語ったハッキネンは次のように付け加えた。
「人の生命を左右するようなことに関しては、人間が最終決断を下すべきだろうと思うよ」