F1モータースポーツ責任者のロス・ブラウンが、F1チームはこれまでの半分の予算で生き残ることも可能なはずだと主張した。
かつてフェラーリなどで手腕を発揮した名エンジニアとして知られるブラウンは2009年にホンダのワークスチームを引き継いだブラウンGPの代表としてF1タイトルを獲得。その後はメルセデスにチームを売却し、2013年まで同チームの代表を務めていた。
その後F1からは距離を置いていたブラウンだが、昨年F1の新オーナーとなったアメリカのリバティ・メディアの指名を受けてF1モータースポーツ責任者に就任。現在は特に現在のコンコルド協定が失効する2020年に向けて、それ以降のF1をどう改革するのかというプロジェクトをリードしている。
■今の半分の予算でF1を面白くできる
そのブラウンがこのほどドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に今後に向けた新F1ビジョンの一端を示唆し、次のように語った。
「我々は現在トップチームが費やしている金の半額以下で非常に複雑なクルマによる魅力的なスポーツにすることができたはずだ。そして誰もそのことに気付いていない」
■F1改善のカギは「完ぺき」の排除?
だが、F1関係者の中には予算に上限値を設けるようなことをすれば、F1チームは「完ぺき」を目指すことができなくなるだろうと懸念の声をあげている者もいる。
しかし、ブラウンは実際にはそのほうがF1にとってはいいことなのだと次のように続けている。
「完ぺきであり予想がつきやすいということは、エンターテインメント性を台無しにしてしまうし、スポーツが損なわれてしまうんだ」
「レース中にリタイアするクルマが少ないという事実は素晴らしい技術的成果だ。だが、残念ながら、それでは面白い展開とはならない」
ブラウンは、時として予期せぬドラマチックな展開が起きることもF1にとっては重要だと次のように付け加えた。
「クルマがファイナルラップでストップした時などは、なんと悲痛なシーンだっただろうか」
■予算制限に関しても話し合いを継続
ともあれ、リバティ・メディアが今後予算に上限値を設定しようと動いていることは間違いないようだ。
そのことについて質問されたブラウンは次のように答えた。
「我々は一定の数字を念頭に置いている。だが、それを言うことはできない。まだチームとの話し合いを行っている最中だし、それを口にするのはフェアなことではないからね」
■フェラーリのF1撤退は単なる脅しではないとエクレストン
一方、F1きっての名門チームであるフェラーリは、リバティ・メディアが発表した2021年以降のPU(パワーユニット)ルール案や予算上限値を設けるという方針が変更されなければF1から撤退する可能性もあると脅しをかけている。
リバティ・メディアによって実権を奪われた前F1最高責任者のバーニー・エクレストンは、フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネは本気だと受け止めるべきだと次のように語っている。
「セルジオは、真剣じゃなければそういうことはしないよ」
■ドライバーが中心のシリーズにすることが重要
そうした中、ブラウンは「今シーズン前半のうちに」リバティ・メディアが導入を計画している2021年以降の計画を明らかにする予定にしているという。
「レースをもっと楽しめるものにしたいと思っているし、10か12のチームすべてが財政的に存続できるF1にしていきたいんだ」
そう述べたブラウンは次のように付け加えた。
「そして、ドライバーが自分の才能を示すことができるようなクルマが必要だ。ほとんどのファンはなによりもドライバーたちに魅力を感じているのだからね」