フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネが、もしF1が今後自らのDNAに反するような方向へ進んでゆくようであれば即座に撤退を決断すると語気を強めた。
最近、マルキオンネはF1モータースポーツ責任者のロス・ブラウンに対する批判を強めている。
ブラウンはかつてミハエル・シューマッハらとともにフェラーリ黄金時代を築いた元エンジニアであり、その後2009年にブラウンGPでF1タイトルを獲得した後、2013年までメルセデスAMGのチーム代表を務めていた人物だ。
F1新オーナーとなったリバティ・メディアからF1モータースポーツ担当マネジングディレクターに指名されたブラウンは2021年以降のF1エンジンルール案を提示したものの、それに対して現在のF1エンジンサプライヤーたちはほとんどが反対の意思表示をしている。
その新エンジンルールがそのまま適用されるようであればF1からの撤退も辞さないという強硬な姿勢をとっているフェラーリ会長のマルキオンネは、最近ブラウンが「F1のDNAに反するような方向へ進もうとしている」との批判を行っていた。
■ロス・ブラウンの態度はまるでモーゼのよう
そのマルキオンネはその後ドイツの『Speedweek(スピードウィーク)』に対しても次のように語った。
「私はチェイス・キャリー(F1最高責任者)とはいい関係にある。我々は10日前に会ってかなり率直な会話を交わしたよ」
「私はロス・ブラウンが現れてグリッドガールは廃止すべきだと発表しても意に介さないよ。そして、エンジンやシャシーがどうあるべきかということにもね」
「彼はあたかも十戒を読み上げるモーゼのように振る舞っている。だが、モーゼのボスに電話すると、彼は私にそれは単に彼(ブラウン)の個人的な意見に過ぎないと言うんだ」
旧約聖書に登場する預言者モーゼを引き合いに出してブラウンを批判したマルキオンネは次のように付け加えた。
「だから、私はそういうレベルの談話には加わりたくないんだ。私は関係者と腰を落ち着けて話をしたいと思っている。メディアがからんでも役には立たないよ」
■F1が面白くないのはエンジンのせいではない
マルキオンネはさらに、フェラーリでは現在顧客チームに対してパワーユニットを1500万ユーロ(約20億円)で販売していることを明らかにし、次のように続けた。
「ロス・ブラウンはエンジンがあまりにも複雑過ぎると言っているようだが、私は“彼は1500万で何を望んでいるのか?”と訪ねたいね」
「リバティ・メディアが我々にはショーを改善する必要があると言っているのは正しいよ。最終戦では50周にわたって何も目を見張るようなものはなかったしワクワクするようなこともなかった」
「だが、それはエンジンのせいではないんだ」
■3秒あればF1撤退を決断できる
マルキオンネはそう語ると、今後の方針次第では本当にF1から撤退することになるだろうと次のように続けた。
「理想的なことを言えば、私はすべてのルールをなくしてしまいたいよ。クルマを色の違いだけで見分けるようなことにつながる提案を受けるのではなくてね」
「もしこれが将来のF1だと言うのなら、フェラーリとしては撤退すると決めるのに3秒もあれば十分さ」