メルセデス・ベンツは、第45回東京モーターショーにおいてF1最強PUを“そのまま”搭載した2人乗りの公道F1カー『メルセデスAMG Project ONE』をアジアプレミアとして公開した。
■メルセデスAMG Project ONE
これは、AMG設立50周年を記念して作られたショーカーだ。すでにフランクフルト・モーターショーにおいてワールドプレミアされたが、アジアでは初公開で“一見の価値あり”とオススメできる究極のスーパーカーだ。
外観では、ルーフにはエンジンに空気を取り入れるためのF1由来の“エアインテーク”を備え、F1で物議を醸すことになった“シャークフィン”まで搭載されている。
さらに空力を考えられた流線的で丸みのあるサイドも、F1のように下辺部分が絞り込まれており、見た目だけでも速そうだ。
2本の湾曲したサイドミラーのピラーも、空力と剛性を考えられた作りになっており、目を引くものとなっている。
フロントの先端にあるメルセデスの“スリーポインテッド・スター”は、ステッカーのように印字されたものだが、これも空気抵抗を意識したものだろう。
さらにインテリアでもF1らしさを感じさせるものになっている。今回、インテリアの公開はされなかったが、提供された写真と情報ではF1スタイルのステアリングとなっている。F1スタイルとはいえ、SRSエアバッグを内蔵している。
また、ルームミラーは廃止され、後方カメラの映像をディスプレイで見ることにより、視認性を確保したという。
これらエクステリアとインテリアの強烈なインパクトもさることながら、中身もすごい。F1で最強・最速のハイブリッド・パワーユニットを“そのまま”搭載しているのだ。予測値では「最高出力は1,000馬力以上、最高速度は350km/h以上」といい、AMGが追求した未来のハイパフォーマンス・ハイブリッド駆動戦略を示したものだという。
F1テクノロジーをそのまま搭載することで、現時点のハイパフォーマンス&スポーツカー分野で技術的に実現できるベンチマークとなるマシンだ。
■モータースポーツの技術は量産車にも役立つ
ダイムラー社のディーター・ツェッチェ会長は発表時に「モータースポーツは私たちにとって、それ自体が目的ではない。レースで開発した技術は後から量産車にも役立つ。F1テクノロジーを公道走行可能なモデルに応用することにした初めてのモデルがメルセデスAMG Project ONEだ」と述べている。
すでに公道走行認証を取得したメルセデスAMG Project ONEは、公道を走れるF1マシンだという。
■搭載されているF1エンジンとは・・・ターボ+電気モーター4基
F1で4年連続(2014年〜2017年)チャンピオンに輝いた最強・最速チーム、それがメルセデスAMGだ。F1界でも最強パワーユニットと認められており、多くのF1チームが欲しがり、そしてベンチマークとしている。
このメルセデスAMG Project ONEに搭載されているパワーユニットは、F1からそのまま採用した。「1.6L V6ガソリン直噴ハイブリッドエンジン」の構成は、「ハイブリッドターボ内燃エンジン1基」と「電気モーター計4基」から成っている。
4基の電気モーターの内訳は、1基がターボチャージャーに組み込まれ、もう1基が内燃エンジンに直接取り付けられている。そして残りの2基が前輪を駆動している。
■エンジン(ICE)
ミッドシップに搭載されたF1エンジンの回転数は1万1,000回転(rpm)に楽々到達するという。現在、世界のどこを探してもこんなに回るエンジンはないそうだ。それでも公道用仕様として耐久性を確保し、普通のハイオクガソリンを使うことから、F1の1万5,000回転に比べたらはるかに低いレベルに抑えているという。
■熱エネルギー回生システム(MGU-H)
F1でよく聞くMGU-Hも搭載されている。
超高回転型エンジンのパワーをさらに増強するハイテクターボチャージャー。“排気タービン”と“コンプレッサー”を分離し、V6エンジンの排気側と吸気側の最適な場所に配置した上で、両者を1本のシャフトで接続している。
このシャフトは電気モーター1基(出力約90kW)を備えており、このモーターがエンジンの運転状態(発進時やエンジン負荷変化後など)に応じて、コンプレッサーを最高10万回転まで電気的に駆動する。
■運動エネルギー回生システム(MGU-K)
MGU-KもF1では馴染みのある言葉だろう。
これの大きなメリットは、ターボラグ(アクセル操作に対して、ターボチャージャーが後から働くことによるレスポンスの遅れ)が完全に除去されたことだという。
これを“光速”レスポンスと称しており、レスポンスタイムは自然吸気V8エンジンをも凌ぐものとなっているという。
電動アシストターボチャージャーにはもう1つメリットがある。それは、エグゾーストシステムから得られる“余剰エネルギーの一部を使って発電”を行えることだ。
作り出した電気は、高電圧リチウムイオンバッテリー(ES)にエネルギー回収機能の一環として“貯える”か、あるいは追加の電気モーターに“供給”することで駆動力を増強する。このモーターの出力は120kWだ。
■新型四輪駆動はフロントが100%電気駆動
新型四輪駆動とは、フロントアクスルが純電気駆動という点だ。
フロントアクスル左右に搭載された各120kWの電気モーターは、左右独立で加減速することができ、現時点での最高水準は2万回転に対して最高5万回転と驚異的なパワーを発生する。
また、ブレーキ時の制動エネルギーの最大80%を回生し、バッテリーに蓄えることで、電動走行可能距離が延びるという。
■最高の熱効率
内燃エンジンの熱効率は、“電動アシストターボチャージャー(MGU-H)”とクランクシャフトに接続された“電気モーター(MGU-K)”を備えることで、40%以上となる見込みだ。
これは量産車にはこれまで達成しえなかった最高値だといい、通常の量産エンジンと比較すると、熱効率は約33~38%だという。
■電気だけで最長25km走れる低燃費、しかし約5秒で時速200kmの世界へ
このF1そのままのハイブリッド・パワーユニットは、電気のみでも最長25km走れ、約5秒で200km/hにまで到達するといい、優れた低燃費とハイパフォーマンスを兼ね備えているのがわかる。
今回の東京モーターショーでは、F1テクノロジーがそのまま搭載された公道走行可能なハイパフォーマンス・ハイブリッドカーの未来を目の前で見ることができるだろう。
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