ホンダF1プロジェクト責任者の長谷川祐介が、ザウバーとの間に結ばれていた2018年のPU(パワーユニット)供給契約がキャンセルされたのは大きな痛手だと語った。
今年4月、ザウバーとホンダは2018年のパワーユニット供給契約を結んだと発表。2015年にマクラーレンへワークスPU供給を開始していたホンダにとって、初めてカスタマーチームが誕生することになると信じられていた。
ところが、ホンダとの交渉を積極的に進めてきていた前チーム代表のモニシャ・カルテンボーンが6月に突然チームから離脱してしまった。これは昨年からザウバーの新オーナーとなったロングボウ・フィナンスがカルテンボーンのチーム運営に不満を抱いていたためだと考えられているが、これによりホンダとの関係にも変化が生じるのではないかとの懸念がささやかれていた。
■ホンダとの契約解除に動いたザウバー新チーム代表
そして、カルテンボーンの後任として7月にザウバーの新チーム代表に就任したフレデリック・バスールは即座にホンダとの契約解消に動くと、ほぼ同じタイミングで来季以降もフェラーリからPU供給を受けることを決定している。
2016年にはルノーのチーム代表を務めていたバスールは、ホンダとの契約解除に関し「両者(ザウバーとホンダ)において大きく状況が変化したためだ」と語り、次のように説明していた。
「我々はある段階において、この話し合いを止める方がみんなにとっていいことだという合意に達したんだ」
「我々とホンダは非常にフェアな形で契約解除を決めたし、話し合いに応じてくれたホンダに感謝したい」
■ホンダの見通しも不透明
そう語ったバスールは、次のように続けた。
「それに、我々にとっては難しい状況でもあるんだ」
「速さという観点からは、我々は非常に厳しい状況に置かれている。我々には安心材料が必要なんだ。ホンダに関しては、マクラーレンとの関係が今後どうなるのか、我々には分からないからね」
■複数チームへの供給を目指していたホンダ
だが、長谷川はホンダとザウバーの契約解除は非常に残念な出来事だったと認め、『Racer(レーサー)』誌に次のように語った。
「もちろん、非常に残念です」
「それはカスタマーチームのプログラムですから、我々のプログラムにそれほど大きな痛手とはなりません。しかし、我々はもっと多くのエンジンを走らせるチャンスを得たいと期待していたのです」
「そうすればもっと多くのデータが取れ、それらの比較も可能となったでしょう。ですから非常に残念です」
「それ以外にも、実務的な面では我々は準備を停止しなくてはなりませんでした。それは大きな打撃です」
■契約白紙化は予想していなかった
ザウバーとの交渉を進めていたのは長谷川ではなく、ホンダのモータースポーツ部長を務める山本雅司だった。
長谷川の方はザウバーのテクニカルディレクターであるヨルグ・ツァンダーと密に連絡を取り合ってきており、直前までザウバーとの契約が白紙に戻されるとは考えていなかったという。
「私は会議には参加していませんでした。担当していたのは山本さんだったんです」
そう語った長谷川は、次のように付け加えた。
「ツァンダーと私はずっと非常にいいコミュニケーションを取っていましたし、我々はどちらも最後の最後までこの協力関係がストップすることになるとは思っていませんでした」