メルセデスAMGを率いるトト・ヴォルフ(エグゼクティブディレクター)が、レッドブルがジュニアチームであるトロロッソに所属するカルロス・サインツの将来を束縛していると批判的コメントを行った。
■今季ハミルトンのチームメート候補だったサインツ
昨年、初のF1ドライバーズタイトルを手中に収めたニコ・ロズベルグが突然のF1引退を発表。急きょその後任としてルイス・ハミルトンのチームメートを務めるドライバーを探さす必要が生じたメルセデスAMGだが、サインツも有力候補の1人だと当時うわさに上っていた。
ヴォルフも当時サインツとレッドブルの契約内容の確認に動いたことを認め、スペインの『El Mundo Deportivo(ムンド・デポルティーボ)』に次のように語った。
「ああ、カルロスも準備が整っているし、私は彼とその家族も好きだからね」
「カルロスは必要とされるものを兼ね備えている現代的なドライバーだよ。ハンサムで、知的で、速いんだ」
■レッドブルはドライバーの運命をコントロールしている
メルセデスAMGだけでなく、昨年はルノーもサインツと2017年の契約を結びたいとオファーしていたことが知られている。だが、サインツはレッドブルと複数年契約をかわしており、レッドブル側がその契約解除を認めなかったと伝えられている。
この件に関し、ヴォルフも次のように続けた。
「彼(サインツ)はレッドブルのドライバーだし、彼ら(レッドブル)は常にいいドライバーを彼らのシステムにとどめておこうとするんだ。あるいは、ドライバーたちの運命をコントロールしようとしているとも言えるね」
「そして、それが現時点での状況というわけさ」
■批判も少なくないレッドブルのドライバー育成システム
ヴォルフが言うレッドブルのシステムとは、若手ドライバーを育成ドライバーとして抱え込み、まずはトロロッソで走らせてみて将来F1タイトルが狙えるドライバーかどうかを見極め、自分たちの眼鏡にかかったドライバーをトップチームであるレッドブルに昇格させるという仕組みのことだ。
2010年からレッドブルで4年連続F1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテル(現フェラーリ)や、現在レッドブルのドライバーを務めるダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペンもそのシステムによってレッドブルへと上り詰めたという経緯がある。
一方で、トロロッソで1、2年走らせてみて、あまり将来性がないと判断されれば、次の若手ドライバーに交代させるために解雇もしくは控えドライバーに降格されるというケースもある。そして時として非情とも言えるさい配が振るわれるそのドライバー育成システムについては批判的な意見も少なくない。
■サインツにはまだ一貫性が足りないとレッドブル首脳
そのレッドブルのドライバー育成システム運用責任者がヘルムート・マルコだ。そのマルコは同じ名前の有名なラリードライバーを父に持つサインツについて、非常によく成長してきているものの、まだ改善の余地があると次のように語った。
「彼はカルロス・サインツJr.(ジュニア)と呼ばれていたが、今ではカルロス・サインツというF1ドライバーとして知られるようになった」
「だが、私は彼が父親による“マドリード保護区”から出ていたら、もっと成長できていたはずだと思っているよ。彼はまだ巣立ちができていない若鳥のようなものだ」
「彼は速い。とても速い。だが、彼にはもっと一貫性が必要だ。彼はバーレーン(第3戦)ではばかげたミスを犯してしまった。だが、彼はまだ若いし、学ぶこともできる。そして彼には忍耐が必要なんだ」
■フェラーリはサインツ加入を望んではいない
一方、レッドブルと2018年までの契約を結んでいると伝えられているリカルドとフェルスタッペンに関しては、まだ契約中途ではあるものの、いずれか1人は今季限りでレッドブルを離れることになるのではないかとのうわさもささやかれている。
もしそうであれば、サインツも今年限りでチームを離脱できる可能性もあるのではないかと質問されたマルコは、「我々は伝統的にドライバーに関しては夏休みが終わってから話し合いをすることになっているんだ。まだ早すぎるよ」と答え、次のように続けた。
「仮に、トロロッソよりもかなりいいチームであれば、我々も話し合いを行うことはできるだろう」
「だが、フェラーリはカルロスを欲しがってはいなかった。あれはカルロスの父親の夢だったんだ。ここまでのところ、誰も我々に電話をかけてきてはいないよ」
「彼(サインツ)は可能な限りいい仕事ができるよう集中しなくてはならない。そうすればおのずと成長できるだろう」
そう語ったマルコは、次のように付け加えた。
「一方で、我々(レッドブル)には控えドライバーも必要だし、その第一の選択肢はカルロスだ」