メルセデスAMGのテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンが、昨年まで所属していたフェラーリに敗れてしまった2017年のF1開幕戦オーストラリアGPについて語った。
■最強メルセデスAMGの技術トップに就任したアリソン
大学卒業後、ベネトンでF1エンジニアとしての道を歩み始めたアリソンは、その後ラルース、ベネトンを経て2000年にフェラーリに加入。ミハエル・シューマッハを擁して黄金時代を築いたフェラーリで、その成功の立役者のひとりとして活躍していた。
その後、2005年にルノーに移籍し、その後ロータスと名前を変えたチームに2013年前半まで所属していたが、そのシーズン半ばに再びフェラーリに迎え入れられていた。しかし、2016年には妻が急死するという不幸に襲われるとともに、フェラーリ内部での関係も悪化していたことからシーズン途中でチームを離脱。今季はイギリスに開発拠点を置くメルセデスAMGの技術責任者に就任した。
■アリソン離脱後に強さを取り戻したフェラーリ
その2016年には再び不振に陥っていたフェラーリだが、アリソンの後任にエンジン部門の責任者であったマッティア・ビノットを昇格させるとともに、若手エンジニアを中心とした新たな技術体制へと移行していた。
そうして迎えた2017年シーズンだったが、フェラーリはシーズン前に行われたバルセロナでのテストでも速さを示し、開幕戦オーストラリアGPでもセバスチャン・ベッテルが2015年のシンガポールGP以来となる勝利を飾った。
■今年は小差の勝負に
そのフェラーリの勝利をメルセデスAMGのピットウォールから見つめていたアリソンは、イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』に次のように語った。
「すごく速いクルマを造ったフェラーリを称賛しなくてはね。オーストラリアでは、我々はついていけなかった」
「予選の後ではまだはっきりとはしていなかったものの、レース後にはシーズンを通じてわずかな差の勝負になるだろうということがはっきりしたよ」
■次はお返しをするとアリソン
だが、メルセデスAMGをこれまで勝利へと導いてきたパディ・ロウの後任として新たな技術トップの座についたアリソンは、最強とうたわれたメルセデスAMGの力をさらに高めていくために貢献していけるという自信があると次のように続けた。
「我々はパニックに陥ってはいないよ。長いシーズンの初戦にしか過ぎないし、我々のクルマも2台とも表彰台に上ったんだからね。だから、次は我々がこの小さな差を逆転しようと決意しているところさ」
■開幕戦の敗因は?
アリソンは、メルボルンで行われた開幕戦決勝をルイス・ハミルトンがポールポジションからスタートしていたものの、その位置を守り切れずにベッテルに優勝をさらわれた理由を次のように語った。
「彼ら(フェラーリ)はスタート直後から我々にプレッシャーをかけていた。それに我々が負けてしまったんだ」
アリソンが言うように、オーストラリア決勝をトップで走行していたハミルトンだが、その背後にはぴったりとベッテルがつけていた。このままではベッテルにピットストップでアンダーカットされるのではないかと恐れたメルセデスAMGは、ベッテルより先にハミルトンにピットへと向かわせてタイヤ交換を行った。
ところが、コースに復帰したハミルトンは前を走るレッドブルのマックス・フェルスタッペンにつかえてしまい、新品タイヤセットのパフォーマンスを生かしきれなかった。そして、その後ピットストップを行ったベッテルがまんまとハミルトンの前でコース復帰を果たしたのだった。
■うまくチャンスをものにしたフェラーリ
「我々はタイヤが長持ちしないだろうと考えたんだ。そしてセブ(ベッテル)が作戦を変えるのではないかとの恐れを抱いていた。だからリスクをとってピットストップを行い、彼の前にとどまろうとしたんだ」
結局そのメルセデスAMGの戦略が功を奏すことはなかったわけだが、アリソンは次のように付け加えた。
「フェラーリはそのチャンスをすごくうまく利用して優位に立ったよ」