ウィリアムズのフェリペ・マッサが、もしDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)がなくなってしまえばF1からオーバーテイク(追い抜き)が消えてしまうだろうとの懸念を表明している。
●マッサ「シーズン途中でアロンソがマクラーレン・ホンダを離れるはずはない」
■オーバーテイクがより困難になった今季のF1マシン
今年のF1マシンは大幅なレギュレーション変更により、これまでよりもダウンフォースが増強されるとともに、昨年よりも25%ワイド化された新タイヤによってグリップも向上している。これによりコーナリングスピードが格段に向上し、サーキットによっては1周あたり5秒前後もラップタイムが短縮されるだろうと言われている。
だが、F1カーが速くなったのは事実だが、その反面、コース上でのオーバーテイク(追い抜き)がこれまでよりも難しくなるという副作用も出ている。
■追い抜き可能なサーキットもあるはず
2002年にF1デビューを飾り、今では35歳となったベテランドライバーのマッサは、母国ブラジルのテレビ局『SporTV(スポルティービー)』に次のように語った。
「今では追い抜くのがすごく難しくなったよ。このルールに変えた時点でそれはすでに分かっていたことだけどね」
「だけど、それはサーキットにもよるよ。オーストラリアは以前から追い抜くのが難しいサーキットなんだ。だから、常にそうなるとは限らないよ」
■賛否両論あるDRS
テクノロジーが進化した近代F1においては、年々オーバーテイクが難しくなる傾向にあった。それではレースがつまらなくなるということで、2011年に人工的にオーバーテイクをしやすくするシステムが導入された。それがDRSだ。
サーキットごとに1か所か2か所、ストレート部分にこのDRSを作動可能な区間(DRSゾーン)が指定されており、その前に通過する検知ポイントで前のクルマとの差が1秒以内であれば、ここでリアウイングの一部を開き、空気抵抗を減らすことで一時的にF1カーの速度を上げ、前車を追い抜くことができるようになっている。
だが、こうした人為的なオーバーテイク支援は本来のモータースポーツの趣旨からすれば好ましいものではないとの考えもある。新F1オーナーのリバティ・メディアからF1モータースポーツ責任者に指名されたロス・ブラウンも、このシステムを撤廃したいとの考えを持っていることが知られている。
■DRSがなくなれば誰もライバルを抜けなくなる
だが、マッサはDRSをなくすということは、現在のF1からオーバーテイクをなくすことを意味するものだと次のように続けた。
「DRSが発明されるまでは、オーバーテイクはずっとそんな感じだったんだ。昔は、レースでミスを犯したり、何か問題が起きたりしなければ、多かれ少なかれスタートしたときと同じ順位でゴールしていたものだよ」
「つまり、DRSがあることで、以前と同じようにはならないということさ。だけど、もしDRSがなくなれば、ほかのドライバーを追い抜ける者は誰もいなくなるよ」とマッサは付け加えた。