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【危機的なマクラーレン・ホンダを考察】なぜマクラーレンはホンダを攻撃しなければならないのか?『復活』で魅力高めるザック・ブラウンの戦略

2017年03月17日(金)12:15 pm

マクラーレンは、ホンダが現在抱えている問題を解決できないと判断した場合に備え、メルセデスに対してパワーユニット供給の可能性について問い合わせたと『BBC』などが報じた。マクラーレン・ホンダはどうなるのだろうか?

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■マクラーレンでは一体何が?

独立系チームのマクラーレンは、ホンダ・ワークスエンジンを独占している。しかし、1年目は散々な結果で、2年目は多少上向いたものの中団グループ争いをしていた。そして3年目の今年、大きな期待を抱いて設計変更したホンダ・パワーユニットだったが、まともに走れないという問題が毎日のように多発し、明らかにパワーも出ていない状況だった。

マクラーレン・ホンダは長期契約。にも拘わらず、マクラーレンは急にホンダに非難が集中するような発言を繰り返している。

なぜだろうか?

■マクラーレンの立場から状況を整理しよう。

・マクラーレン・ホンダは複数年契約。契約年数は10年と言われており、今年が3年目。

・1年目は「(格下カテゴリーの)GP2エンジン」とアロンソに言われ、まともに走れなかった。2年目は中団グループ争いがやっとで、上位とはまだ大きな差があった。

・ホンダは「サイズゼロ」コンセプトを諦め、大きな期待を抱いてメルセデスと同じ設計で挑んだ今年のF1開幕前テストは、トラブル多発により走行距離は断トツの最下位だった。最高スピードも25km/hほど遅かった。

・エースで2度のF1世界チャンピオンであるフェルナンド・アロンソとの契約は今年が最終年。序盤戦の結果次第でアロンソは他チームへの移籍を決断する可能性が高い。アロンソと契約しているのは「マクラーレン」だ。

・マクラーレンは、ホンダから無償でパワーユニット供給を受け、さらにドライバーの給与なども負担してもらっている。

・マクラーレンの最大のネックは十分なスポンサーがないこと。スポンサーマネーが潤沢にあれば、メルセデス・パワーユニットのカスタマー契約をすることも、フェルナンド・アロンソの契約金を払うこともできる。

・スポンサーを獲得するためには、通常は良いレース結果が必要で、その結果を持って、今シーズン途中、または来シーズンからの契約を獲得するべく交渉に当たる。しかし、今年のマクラーレン・ホンダのテスト結果を見ると優勝にはほど遠い。

・マクラーレンは昨日、ミカ・ハッキネンと契約を結んだ。主にザック・ブラウンとともにマーケティング戦略で共に働く。さらに、市販車のマクラーレン・オートモーティブのマーケティング戦略でも協力する。

■マクラーレン、スポンサー獲得のための徹底的なマーケティング戦略

これまでの流れを見て推測すると、マクラーレンはホンダ・マネーに頼らなくても活動できる資金を集める必要があるため、マーケティング戦略のプロであるザック・ブラウンが『マクラーレンにしかない魅力』を増やそうとしているのがわかる。

今の低迷しているマクラーレンには、レースリザルトにまるで説得力がなく、魅力もない。遅い、壊れる、最下位グループ。これではスポンサー交渉で強みが何もない。

よって、ザック・ブラウンは、マクラーレンの『過去の栄光』を【復活】させることで、レース結果以外の『マクラーレンにしかない魅力』を増やそうとしている。すでに取り組んでいるのが『伝統カラーであるオレンジ色』の【復活】、そして『シューマッハのライバルで伝説的F1ドライバーのミカ・ハッキネン』の【復活】だ。

それと同時に、現場責任者であるレーシングディレクターのエリック・ブーリエには「マクラーレンは良いクルマ、遅いのはホンダの責任だ」と言わせ、メディアを通じて世界中に発信。同時に、メルセデス【復活】に向けて水面下で交渉に入り、さらにハッキネンを【復活】させることで、「チャンピオンを獲得したマクラーレン・メルセデス」の【復活】を期待させ、スポンサー獲得をしようという考えだろう。

さらに、市販車部門のマクラーレン・オートモーティブのマーケティング戦略にミカ・ハッキネンが関わることで、世界中の富裕層にPRし、ハッキネン曰く「世界で最高のハイパフォーマンス・スーパーカー」の購入者や購入希望者が、チームのホスピタリティブースを訪れ、F1の世界観に感動して、スポンサー候補に発展する可能性も考えられる。そして感動した富裕層は、新たな富裕層の友を呼ぶ、という好循環になる。

チームだけではなく、市販車でも、そしてホスピタリティでも、マクラーレンしかない特別な空間、そしてブランド力・価値を上げることで、チームスポンサーの1ステッカーの価値が上げられるのだ。

結果だけに頼るのではなく、徹底的なブランディングで勝負する。それがザック・ブラウンの戦略だろう。

■スポンサーが獲得できたら・・・

マクラーレンが、十分なスポンサーマネーを集めることができたら、次に目指すのは本業の「レースに勝つこと」だ。そのためには、良いパワーユニットが必要なのは、この3年間のメルセデスAMGの強さを見れば明白だ。

仮にカスタマー仕様のメルセデス・パワーユニットを搭載したとしても、メルセデスAMGに勝つことができなくとも、ウィリアムズのように中団から上位争いはできる可能性があり、マクラーレンとしては現状よりははるかに良いリザルトが手に入る、はずだと考えるだろう。そうすれば、さらにスポンサーを獲得するチャンスも拡がる。

そして、お金も十分ある、最速エンジンもある、となれば、フェルナンド・アロンソを引き止めるのに最大限の材料が揃うはずだ。

■スポンサーが獲得できない場合・・・

マクラーレンとしては、フェルナンド・アロンソを引き止めるには、競争力が重要なポイントになる。そのため、メルセデスとの契約に踏み切る可能性も考えられるだろう。しかし、マクラーレン・メルセデス復活でもフェルナンド・アロンソが移籍するという場合、マクラーレンとしては金銭的リスクを負ってメルセデスに乗り換えるメリットは減ることになる。

■ホンダには序盤での結果が求められる

ホンダとしては、フェルナンド・アロンソを引き止めるには、ホンダのパワーユニットの成功しかない。そして、もしマクラーレンが、ホンダとの契約を破棄した場合には、ホンダのF1活動が危機的な状況になることも考慮しなければならない。うわさになっていたザウバー・ホンダでは、フェルナンド・アロンソのようなフィードバックは得られないだろう。

よってホンダには、今シーズン序盤戦で可能性を感じさせるような大きな飛躍を遂げるしかない。まずは競争力を示すために、圧倒的なパワーが必要だ。フェルナンド・アロンソがマクラーレン・ホンダに求めているのは、「チャンピオン獲得」の可能性だ。

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