アメリカ最大のオープンホイールレースシリーズであるインディカーでは、F1で開発が進められている「ヘイロー」と呼ばれるコックピット保護装置を導入することはなさそうだ。
■懸案となっているドライバーの頭部保護
以前からドライバーの頭部がむき出し状態となるフォーミュラカーにおいて、いかにドライバーの命を守るかということが大きな課題となっている。
2014年に鈴鹿で行われたF1日本GP決勝で、雨でコントロールを失ったジュール・ビアンキ(マルシャ)のクルマがコース脇を走行していた作業車の下に潜り込むように激突。この事故で頭部に大きな衝撃を受けたビアンキは、こん睡状態に陥ったまま翌年の7月に帰らぬ人となった。
さらに2015年8月にはポコノで開催されたインディカー第15戦の決勝レース中にジャスティン・ウィルソンの前で別のクルマがクラッシュ。その破片の直撃を受けたウィルソンがその翌日に死去するという事故も起きている。
こうした死亡事故発生を受け、F1ではドライバーの頭部を保護するシステムの開発を推進しており、現在その最有力候補と見なされているのがドライバーの頭部をロールバーのような保護装置で囲む方式の「ヘイロー」だ。
■すでに完成の域に来ているヘイロー
当初、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、こうしたコックピット保護装置を2017年に導入する予定で進めていた。だが、その安全面についてさらなる検討が必要だということになり、2018年まで導入が見送られることになっている。
だが、FIAの安全対策責任者を務めるローラン・メキーは、ドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に次のように語った。
「技術的な観点からは、ヘイローはすでに完成している」
だがメキーは、今後実際にヘイローを導入するにあたり、チームやドライバー、そしてFIAによる話し合いが現在も続けられていると付け加えている。
■インディカーにヘイローは向かない
一方、F1とは違い、オーバルコースでのレースも行われているインディカーでは、このヘイローを導入する可能性はひくそうだ。
インディカーの親会社にあたるハルマン&カンパニー社のCEOを務めるマーク・マイルスは、次のように語った。
「我々は、ヘイローを導入する可能性はないと考えている」
「我々にはバンクのついたサーキットがあるが、それ(ヘイロー)をつければクルマから外が見えなくなってしまう」
「だが、我々もドライバー頭部保護装置開発には非常に興味を持っているし、懸命に取り組み続けている」
そう語ったマイルスは、次のように付け加えた。
「我々としては、ヘイローよりも、限定的なウィンドスクリーン(風防タイプ)を導入する可能性のほうが高いと見ているよ」
■F1もヘイロー導入の最終判断はこれから
だがメキーは、実際のところF1においてもそうしたウィンドスクリーンやキャノピータイプの保護システムを導入する可能性も「まだ消えたわけではない」と述べている。
「技術的には可能だよ」
そう語ったメキーは、次のように付け加えた。
「我々は現在ヘイローに関する最終判断を待っているところだ。そして、彼ら(F1チームやドライバーたち)がコックピットカバーなど、外観的にもっとアピールできる別の何かを望むかどうかということをね」