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メルセデスの『プランA』と『プランB』 2017年と2018年以降も見据えた交渉

2016年12月18日(日)6:20 am

メルセデスは、才能あるドライバー候補としてバルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)獲得に絞ってウィリアムズと交渉していると報じられている。

ボッタスの才能はF1界で以前から高く評価されており、一時はフェラーリ入りのうわさもあったので、その才能をトップチームのメルセデスが欲しがるのは当然だろう。

その才能を前提とした上で、ボッタスの契約をウィリアムズから買い取る材料は以下のように揃っており、現時点で他のドライバーたちよりも双方のメリットが大きいことがわかる。これらから、メルセデスにとって最優先の『プランA』であることがわかる。

■【ボッタスのマネジメント】という関係
ボッタスのマネジメントには、メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフが関わっている。つまりボッタスとウィリアムズとの契約内容の詳細まで全て理解している。

■【ウィリアムズの株主】という関係
投資家のトト・ヴォルフは、過去にウィリアムズの株主としてF1の世界に入り、そしてウィリアムズの非常勤取締役も務めていた。2016年3月に全株を売却したものの、チームの人や内情をよく知っている。

■【メルセデスPU】の関係
ウィリアムズはメルセデスのパワーユニット(PU)を使用しているため、メルセデスとしてはPU使用料の減額などをボッタス獲得の交渉材料として提示することができる。報道では、約15億円もの値下げを提示しているようだ。

一方、メーカーの支援がなく、株式を上場している独立系レーシングチームのウィリアムズとしては、複数年のPU使用料減額やPU無償提供など有利な条件を交渉する絶好のチャンスだ。

■【代わりのドライバー】を提供可能
ウィリアムズは、経験と実績もあり速さもあるボッタスがチームを引っ張っていく体制を整え、来季は表彰台争いの常連、そして常勝チームへ復活するという大いなる野心を持っている「レーシングチーム」だ。もしここでボッタスを手放したら、今度はウィリアムズがドライバー探しに苦慮することになり、復活するための計画の一部が欠けることになる。

トト・ヴォルフのコメントや報道を見ると、ウィリアムズの立場も考慮し、ボッタスの代わりのドライバー候補として、若くて速いパスカル・ウェーレインの起用を提案しているようだ。メルセデスにとっても、強い中堅チームでウェーレインに経験を積ませることができるので願ったり叶ったりだろう。

しかし、ウィリアムズは「経験と実績もあり速さもあるドライバー」でなければボッタスを手放すことないと言っており、それを満たすのは“美しく”F1を引退した「フェリペ・マッサ」だという。ルールが変わる重要な時期なので、チームをよく知っているマッサを必要とするのも当然だが、一方で、若手を起用して成功しているレッドブル/トロロッソという事例があることを忘れてはならない。

■【技術部門の人材】も提供可能
メルセデスの技術部門エグゼクティブディレクターを務めるパディ・ロウは、まだメルセデスと2017年の契約更新をしておらず、フェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズなど他のビッグチームで働く可能性を視野に入れているようだ。

そこで、近い将来の引退を考えていると言われるウィリアムズのチーフテクニカルオフィサー(CTO)パット・シモンズの後任としてパディ・ロウが加入することで、パディ・ロウにとっても、パット・シモンズにとっても、ウィリアムズにとっても、そしてボッタスが手に入るメルセデスにとっても良いことだと言えるだろう。メルセデスはパディ・ロウの後任として、今シーズン途中までフェラーリのテクニカルディレクターだったジェームス・アリソンの起用を検討しているというから、この点についてはドライバーほど心配する必要はないかもしれない。

■ウィリアムズのメリット
ウィリアムズにとってみると、ボッタスの契約の買い取り金、エンジン代金の大幅な減額、ドライバー市場の中でも有望な若手ドライバーのウェーレイン、そしてメルセデス技術トップのパディ・ロウが手に入るということは、メリットも大きいだろう。

■トト・ヴォルフのメリットと影響力
ここまで見てみると、トト・ヴォルフの影響力が非常に大きいことがわかる。すべての交渉に関わっているのがトト・ヴォルフだ。そして、このメルセデスにとってのドライバー不在という危機を乗り越え、すべて上手くまとめたとき、トト・ヴォルフの実績と影響力もまた大きくなり、自身とメルセデスの2018年以降の契約延長交渉も優位に進むことになるだろう。

クリスマス休暇をうまく活用することで、将来構想について、あと半月以上はじっくり考えることが可能になった。トト・ヴォルフはメルセデスにとっての突然の危機を見事にチャンスに変えていると見ることもできる。

■メルセデスの『プランB』
もしウィリアムズが「ボッタスを手放さない」と決断したら、メルセデスはどうするのだろうか?

メルセデスにとっての『プランB』は、メルセデスがウェーレインを1年起用し、前半戦の結果が良ければそのまま2018年も継続するだろう。もし開幕から夏までにウェーレインのパフォーマンスが期待値より低ければ、2018年の契約がフリーになるセバスチャン・ベッテルかフェルナンド・アロンソなどの大物獲得へと動くだろう。

しかし、2018年については、2017年もメルセデスが最強チームの地位を確保できている事が大前提だ。もし、前半の数戦でフェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズなどがメルセデス以上に強ければ、当然ドライバーたちは2018年の移籍候補先としてメルセデス以外を選ぶだろう。過去にマクラーレン、ウィリアムズ、フェラーリ、そしてレッドブルの最強時代が終焉を迎えたように、メルセデス最強時代もいつか終わりがくるのは間違いない。

これらを前提に考えると、1月に発表されるであろうメルセデスの新ドライバー発表が非常に楽しみになる。

もしあなたが、トト・ヴォルフ、ニキ・ラウダ、クレア・ウィリアムズ、そしてアロンソやベッテルの立場だったら、どう考え、どう交渉し、いつ決断するのが正解だろうか?チームも判断を誤ればすぐにトップから転落してしまう。ドライバーも、ハミルトンのように移籍が成功するケースもあるが、アロンソやベッテル、その他の多くのドライバーが移籍して苦労している。運も味方につけた者だけが、勝者になれるのがF1という世界だ。

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