1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブが、2017年にF1デビューを飾ることになった同郷カナダ出身のランス・ストロールについて、これからレーサーとしての苦しみを味わうことになるだろうと語った。
ビルヌーブも1996年に同じウィリアムズからF1デビューを飾ったという経緯がある。だが、ビルヌーブの場合はアメリカの最高峰フォーミュラカーレースであるCART(インディカー)で1995年にタイトルを獲得し、十分な実績を持ってのF1挑戦だった。
だが、今年ヨーロッパF3でシリーズチャンピオンに輝いたとはいえ、18歳のストロールがウィリアムズのシートを獲得できたのは大富豪の父親のおかげであるのは確かだ。
■才能と金に恵まれるのは望ましいこと
これまでにも、資金力を背景にF1シートを獲得する「ペイドライバー」に対して批判的なコメントを行ってきていたことでも知られるビルヌーブは、『Journal de Montreal(ジュルナル・ド・モンレアル)』に次のように語った。
「僕は、金で才能は買えないと言ってきたし、その考えに変わりはないよ」
「だが、金がある者には才能がないというわけではない」
「金があれば正面玄関から入っていけるということだ」
■F3王座獲得は何の保障にもならない
だが、ビルヌーブは、今年のヨーロッパF3を圧倒的な力で制したとはいえ、ストロールがF1ですぐに輝きを放てるとは限らないと次のように続けた。
「F3で勝ったことには何の意味もないんだ。これまでに多くのドライバーがF3で勝ったけれど、その後は消えてしまった。ほかの者たちもF1では何もできなかったし、F1では打ち砕かれてしまったよ」
■富豪の父親は賢いやり方をした
しかし、ビルヌーブはカナダのファッション業界の大物として知られるローレンス・ストロールは、息子をF1に昇格させるために非常にうまい形でサポートを行ってきたと評価している。父親のローレンスは、息子に勝ち方を学ばせるために優秀なエンジニアを雇って所属チームに送り込んだり、特別なシミュレーターを用意したりして十分な準備をしてレースに臨むことができる環境を与えていたと言われている。
「彼(ローレンス・ストロール)は正しい選択をして彼の息子に準備をさせることができたよ」とビルヌーブは語っている。
■F1デビューしてからがストロールの正念場
だが、ビルヌーブは、父親の強力な支援によってF1に昇格するストロールについて、その本当の力が試されることになるのがF1だろうと次のように続けた。
「ランスが精神的にどれほどの進歩ができるかという問題がまだ残っている。彼はそこではもはや父親の保護を受けることはできず、自分自身で対処しなくてはならなくなる」
「彼はすごく速いし、才能もある。だが、彼はまだ苦しみを味わったことがないんだ。ランスはレースで勝利するために戦ってきたが、モータースポーツで生き残るために戦ったことはないからね」
そう語ったビルヌーブは、次のように付け加えた。
「彼の学びはまだ終わっていない。そして、僕は彼がどういう反応を示すか心配しているよ」