来季、引退するフェリペ・マッサの後任としてウィリアムズからF1デビューを飾ることになった18歳のランス・ストロールだが、その億万長者の父親は息子のF1デビューに向けて少なくとも8,000万ドル(約83億5千万円)をウィリアムズにつぎこんだと言われている。
今年ヨーロッパF3シリーズの年間チャンピオンに輝いたストロールがウィリアムズのシートを確保したことは公然の秘密状態となっていたが、11月に入ってやっとウィリアムズが来季はバルテリ・ボッタスとストロールというラインアップで臨むことを正式に発表した。
■F1に上がれるのは自分の力だとストロール
だが、いかにヨーロッパF3のタイトルをつかんだとはいえ、ストロールがウィリアムズのシートを獲得できたのは金の力によるものだという見方が強いのも確かだ。
「人は誰でも自分の意見を持っているし、僕がそれを変えることはできないよ」
『Times(タイムズ)』にそう語ったストロールは、次のように続けた。
「僕は金持ちの家に生まれた。それを否定するつもりはないよ。だけど、僕がF1に昇格できたのは、僕がこれまでに戦ってきたシングルシーターシリーズですべてタイトルを取ってきたからだと信じている」
■父親の財力で特権を得ていたストロール
だが、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、やはりそれだけではないと報じている。
ストロールの父親であるローレンス・ストロールは「トミーヒルフィガー」や「ペペジーンズ」などのファッションブランドを展開していることで知られるカナダファッション業界の大物であり、2016年シーズンに向けて息子が所属していたF3のプレマチームを買収するとともに、息子の指導者としてかつてフェラーリのエンジニアを務めていたルカ・バルディセッリを雇い入れていることも知られている。
当然ながら、プレマチームにおいてはストロールがナンバー1待遇であり、F1のエンジニアたちがその走りをサポートするとともに、ストロールはイギリスのグローブにあるウィリアムズのファクトリーに設置されたシミュレーターでの作業も行うことができていたのだという。
さらに、ストロールは2014年仕様ウィリアムズF1カーを用いて世界一周テストプログラムも行っていた。ウィリアムズの20名のスタッフがこれをサポートし、エンジンサプライヤーであるメルセデスからも2人のエンジニアがこのプロジェクトのために派遣されていたという。
一般にはあまりよく知られていないことだが、このF1テストプログラムによって、ストロールはこれまでにシルバーストン(イギリス)、ハンガリー、モンツァ(イタリア)、オーストリア、バルセロナ(スペイン)、アブダビ、オースティン(アメリカ)、そしてソチ(ロシア)でテストを行ってきているようだ。
■F1デビューに向けて走り込んだ距離はビルヌーブ並み
ウィリアムズの技術最高責任者を務めるパット・シモンズはこの事実を認め、次のように語っている。
「過去にデビューに向けてこれほどテストで走り込んだドライバーはジャック・ビルヌーブが最後だったよ」
それだけではない。ストロールがウィリアムズのファクトリーで使用していた高性能シミュレーターは、ストロールの父親が費用負担して息子のために特別に用意させたものだったという。そのシミュレーターは1年を通じてF3のための専用設定が施されていたため、ボッタスもマッサもそれを使うことはできなかったようだ。
こうした経緯を経て来季ウィリアムズでF1デビューを果たすことになったストロールは、ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』に次のように語った。
「もちろん、モータースポーツは金が重要なスポーツなんだ。だから僕はすごくうれしく思っている。父が僕を助けてくれるからね」