現在のF1を代表する2人の技術者が、すぐにも2021年以降のエンジンルールについて検討を開始すべきだと主張している。
2014年にF1はそれまでの自然吸気V8エンジンに替えてパワーユニットを導入。それ以降、メルセデスAMGがライバルたちを寄せ付けない圧倒的な強さを示している。
■弊害が大きかった現行パワーユニット導入
ファンにとって魅力あるF1への脱皮を目指し、2017年からは昔のような幅広タイヤが導入されるとともに、シャシーに関するルールも大きく変更されることになっている。だが、1.6リッターV6エンジンにターボとERS(エネルギー回生システム)を組み合わせたパワーユニットに関しては2020年までは現行ルールを継続することが決まっている。
だが、F1が2014年にパワーユニットを導入したのは間違いだったと考えている者も少なくない。最先端の技術を用いた最新エンジンは以前よりも音が小さくなりファンの不評を買ったとともに、コストが高額となり、小規模なプライベートF1チームの台所事情を悪化させるという弊害も生んでいた。
■F1エンジンが抱える課題は大きい
現在最強の位置にあるメルセデスAMGの技術トップであるパディ・ロウでさえ、F1は将来に向けてどうするべきかという「大きな問題」を抱えていると認めている。
「熟慮すべき非常に大きな問題が生まれてきている」
そう述べたロウは、次のように続けた。
「このスポーツに合ったエンジンあるいはパワーユニットをどう定義するか? 同時に今後市販車に採用されてゆくであろうパワーユニット的な技術との関連も考慮しなくてはならない」
「我々は電子的制御が非常に増したテクノロジーを何らかの形で使い続けるのか、あるいは自分たちの道を突き進むのか?」
「つまり、そういったものすごく重要な課題があるわけだ」
■例えばF1エンジン音の問題をどう考えるか?
2014年以来、それまでの自然吸気エンジンと比べると格段に小さくなったエンジン音が批判の対象となっていた。今では音量もだいぶ改善されてきており、今年はコースに近い位置で観戦する観客たちが再び耳栓を使用しているとも伝えられている。
「かつてのV8やV10の音に匹敵はしないがね」と語ったロウは、次のように続けた。
「だが、今も興味深い議論が起きてきているよ。もし市販車が将来的にフル電動化されるようになれば、どこかの時点でまったく音がしないクルマになってしまうと思う。そのとき、我々(F1)には音が必要だろうか? 音がパフォーマンスを連想させるだろうか?」
「そういった非常に興味深い議論があるし、私はそのプロセスを開始する必要があると思っているよ」
■すぐにでも次期F1エンジンに関する検討を開始すべき
フェラーリの上級エンジニアであるジョック・クリアも、F1が現在のV6ターボによるパワーユニットを導入することを決めたときにその影響を過小評価していたのではないかと考えている。それがファンを失望させ、チーム間の大きな力量差を生じさせることにつながるとまで読み切れていなかったというわけだ。
「そうしたことに関し、できるだけ速やかに開始し、できるだけ早く問題点を認識すればするほど、このスポーツにとって最もよい解決策を早く見いだすことができるはずだ」
そう述べたクリアは、次のように付け加えた。
「それは、このスポーツが何を必要としているのか、大衆が何を望んでいるのか、どうすればかっこよくなるのかといったことに照らして考えていく必要がある。だが、基本的には(F1は)技術的挑戦であるわけだし、我々はテクノロジーを正しく使うことが必要なんだ」