ブレーキメーカーのブレンボが、ミハエル・シューマッハとセバスチャン・ベッテル、2人のドイツ人チャンピオンには、ブレーキの使い方とセッティングに見られる数多くの類似点があるという。
■圧勝のドイツ人
ドイツは、この四半世紀でF1チャンピオンを最も多く輩出した国だ。1990年から現在までで、ドイツ人ドライバーの優勝は153回。続いてイギリス人が114回、ブラジル人が56回。(2016年開幕前時点)
ドイツの優勝数の大半は、ミハエル・シューマッハとセバスチャン・ベッテルによるもので、シューマッハが91回、ベッテルが42回。そのすべてがブレンボ製ブレーキ搭載マシンでの優勝だ。
■シューマッハとベッテルの共通点は「挙動の違いを人一倍鋭敏に見極める能力」
シューマッハもベッテルも、どちらも非常に洗練されたドライビングテクニックと、サーキット上でめったにミスをしない冷静な頭脳の持ち主であるうえに、二人とも、マシンのセッティングによる挙動の違いを人一倍鋭敏に見極めることができるという。
もちろんブレーキの組み合わせにも敏感。ブレンボは彼ら2人を技術部副部長と呼びたくなるほどだという。技術的な選択肢のアドバイスや、さらにはマシンの開発の話もできる、技術部ディレクターにとってまさに助っ人的存在。
■シューマッハのメンタル能力の高さ
シューマッハがベネトンに在籍していた当時からフェラーリへの移籍後、さらにはメルセデスでの現役復帰まで、ずっとサポートしてきたブレンボの技術者によれば、シューマッハはメンタルを整えておく能力が非常に高いドライバーだったそうだ。シューマッハがブレンボのブレーキシステムに望んでいたのは、どんなレースでもコンスタントに自分の意のままに動き、最後まで性能が持続するブレーキだった。
■ベッテルは「リトル・シューマッハ」。現役で唯一、性能が僅差でも区別できる
同じことはベッテルにも言える、と分析するのは、トロ・ロッソからフェラーリに移籍、そしてレッドブルで4シーズン連続ワールドチャンピオンに輝いたベッテルを見続けてきたブレンボの技術者。彼らによれば、ベッテルは、マシンの開発に大きく貢献してくれる、まさに「リトル・シューマッハ」。そのうえ、摩擦材のわずかな違いも感じ取る鋭敏な感覚を持ち合わせていて、性能が僅差でも素材がカーボンかそれ以外かを区別できるドライバーは、現在のF1シーンでは唯一ベッテルだけだそうだ。
■二人とも反応が鋭いブレーキが好み。踏み込みが非常に強い
ブレンボは、F1参戦40周年を迎えた。技術者たちは、シューマッハとベッテルはどちらも反応の非常に鋭いブレーキペダルが好みという点で似ているという。二人とも体格は大柄ではありませんが、踏み込みが非常に強いことでは有名。
■予選でも類似点
シューマッハとベッテルは、予選でブレーキシステムの性能を試す際のアプローチも同じだという。予選の最終ラウンド、最後のラップ計測に臨む際に、二人はマシンのブレーキをブレンボの新品のセットに変える。ディスクの摩擦力を高くして、ライバルとの争いでギャップを刻むという。シューマッハがポールポジションを68回、一方ベッテルがすでに46回、いずれもブレンボのブレーキで獲得しているのは、偶然の産物ではないかもしれない。