先週末にアゼルバイジャンの首都バクーで初開催されたF1ヨーロッパGPだが、レース前にはセーフティカー出動必至の荒れたレースになるだろうと考えられていた。
●【結果】F1ヨーロッパGP決勝の順位、タイム差、周回数、ピット回数
■予想に反してセーフティカー導入なし
F1のサポートレースとして行われたGP2シリーズの2レースはいずれもクラッシュやトラブルが多発し、かなり荒れたレースとなっていた。F1でも荒れたレースになれば、メルセデスAMGを追うフェラーリやレッドブルにもチャンスが訪れるのではないかと期待していた者も少なくないはずだ。
ところが、実際にはセーフティカーが出動するようなクラッシュが起こることはなく、マシントラブルで4台のクルマがリタイアしただけの平穏無事なレースとなった。
「セーフティカーが出動する回数に賭けいた人たちはかなりのお金をすってしまっただろうね」
■ヨーロッパGP決勝で事故が起きなかった理由は?
そう笑いながら語ったフェラーリのセバスチャン・ベッテルは、F1のレースがスムーズに進んだのはF1とGP2のレベルが違うということを現したものだとの考えを示している。
バクーで今季5勝目を飾ったメルセデスAMGのニコ・ロズベルグも同じ考えのようだ。
「僕たちはみんな経験が豊かだし、事故をうまく避けることができるからね。それにGP2で起きたことから学んでいたのも確かだ。僕たちはあれを見ていたし、ひどい混乱が起きていた」とロズベルグは振り返った。
ベッテルはさらに、最高速度が時速360km以上に達していた壁に囲まれたバクー市街地サーキットにおいて、レース前に安全問題に関する話題がかなり取り上げられていたことも事故のない決勝になった理由のひとつだったと次のように続けた。
「ここには、もしミスをすればどうなるかということを考えたくないようなコーナーがいくつかあると思う。それが注意を喚起することになったのは確かだね」
「僕たちが手を抜いていたのだとは思っていないよ。だけど、ばかげたリスクを取ることをしなかっただけなんだ。そうすれば最悪の終わり方をする可能性があったわけだからね」
■決勝前にリスクを避けるよう指導していたF1チーム
もちろん、各チームとしてもレース前にドライバーたちにGP2で起こったような混乱をうまく避けるようにとの指示が出ていたのも確かだろう。
だが、事実として一度もセーフティカーが発動されるような事態とならなかったことには、チーム首脳陣も驚きを隠せなかったようだ。フェラーリのセルジオ・マルキオンネ会長は決勝後に次のように語った。
「考えていたこととは逆のことが起きたよ。事故が起きず、セーフティカーも入らなかった」
「ドライバーたちはチームによる指導を守り、事故が起きることを避けたのだ」
■ドライバーも当てがはずれたはずだとサーキット設計者
レース前には安全上の問題が少なくないとされていたバクー市街地サーキットだが、ここを設計したヘルマン・ティルケは、レース後に『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「ドライバーたちは多分保守的なアプローチを取ることを選んだんじゃないかな。なぜなら、彼らは完走さえできれば自動的にポイントを取ることができるだろうと考えていたようだからね」