新生ルノーF1のシートを失ったパストール・マルドナードが、それは自分にとってまさに「寝耳に水」の出来事だったと語った。
■直接の原因はスポンサーのトラブル
ルノーが今月3日(水)に2016年の活動体制を発表したが、その直前にシートを失うこととなったマルドナードは、自分のスポンサーであるPDVSA(ベネズエラ国営石油会社)のトラブルがその要因となったことを認めた。
マルドナードは、イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』誌に次のように語った。
「数時間のうちに状況が劇的に変化してしまい、僕はスポンサーを失ってしまった。すべてはそれが原因さ」
「怒りなどは感じていないよ。だけど決して幸せではないね。まさに寝耳に水だったんだ」
それまでPDVSAは1年につきおよそ5,000万ドル(現在のレートで約56億円)のスポンサー費用を負担してマルドナードを支援していたと考えられている。だが、原油価格下落と同時に汚職スキャンダルという問題を抱えたPDVSAにはもはやそれだけの資金をルノーに持ち込むことはできなかったようだ。
■PDVSAはF1からのみスポンサーを撤退か
だが、今回の詳細な経緯を尋ねられるとマルドナードは次のように答えた。
「ノーコメントだよ。おおやけにしづらい部分もあるし、僕自身にもまだはっきりとは分かっていないんだ」
「僕はただ代替案のことを考えているだけだよ。レースを継続できるようにね」
「PDVSAはずっと素晴らしい仕事をしてきたし、ほかのドライバーたちやほかのスポーツの支援も行ってきていた。きっとほかのスポーツへの支援は継続されるだろうと信じているよ」
■唯一の優勝はF1の歴史においても最大級の驚き
マルドナードは2011年にウィリアムズでF1デビューして以来、2014年に移籍したロータスを含めて通算で100戦近く戦ってきた。そして2012年のスペインGPでは優勝も遂げている。
「僕は彼ら(ウィリアムズ)の歴史において最悪の時期にレースをしていたんだ」と語ったマルドナードは、2012年にバルセロナで果たした唯一の優勝について次のように続けた。
「あれはF1の歴史においても最大級の驚きだったと思う。だけど、僕にとってはそうではなかったよ。僕はそれをよろこぶにふさわしかったからね」
「ウィリアムズのファクトリーで行われた祝勝パーティーは温かく、忘れられないものだった。ウィリアムズが冷たいチームだなんて考えるのは間違いだよ」
■ロータスでは資金不足が信頼性の問題を生んでいた
そう語ったマルドナードだが、最後の2シーズンを送ったロータスもまた最悪の時期を迎えていたのは間違いのないことだ。
「残念だよ」と語ったマルドナードは、次のように続けた。
「クルマはよかったんだ。だけど財政上の問題によって開発を続けることができなかったんだ。そして、金を節約するために交換しなかった古いパーツが壊れて、信頼性の問題が発生してしまったよ」
ロータスがルノーに買収され、2016年からは健全なチームで戦えると思っていた矢先にシートを失ったマルドナード。そのシートには昨年まで所属していたマクラーレンから契約を解除され、一時はF1キャリアも終わりを迎えるかと思われたケビン・マグヌッセンが座ることになった。