1980年代後半に絶対的な強さを誇った伝説的F1コンストラクターであるマクラーレン・ホンダが23年ぶりに復活したが、その初年度は悲惨と言わざるを得ない成績で終わった。
チームランキングも、全10チーム中の9位で、下には1ポイントも獲得できなかったマノー・マルシャがいるだけという状況だ。果たして来季はマクラーレン・ホンダが大きくばん回することはできるのだろうか?
だが、そうなると予感させる兆候がいくつか見られるのも確かなようだ。
【兆候1】休日返上で開発を続けるマクラーレン・ホンダ
マクラーレンの最高権威であるロン・デニスは、ウォーキングにあるファクトリーでは冬の間に懸命な取り組みを続けることになるとF1公式サイトに次のように語っている。
「今年の冬の間、土曜日か日曜日にマクラーレン・テクノロジー・センターを訪れたとしても、クルマの駐車スペースはもうそれほど残されていないことが分かるだろうと言っておくよ」
ホンダにとっては7年ぶりのF1復帰となったわけだが、デニスは今年はホンダが非常に苦しんだことにそれほど驚きはしなかったという。デニスに言わせれば、「F1とはそういうものなのさ」というわけだ。
ホンダF1プロジェクト総責任者の新井康久も、この冬は休日返上で2016年に向けた開発に取り組むと宣言していたが、名門マクラーレンとホンダがそうした姿勢を示しているからには、来季も今年と同じ結果で終わるとは考えにくいところだ。
【兆候2】ホンダの躍進を信じていたレッドブル
ホンダは、2016年もマクラーレンにだけエンジンを供給することになる。だが、ルノーとの関係が悪化したレッドブルがホンダと交渉を行っていたことも明らかとなっていた。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、地元オーストリアの『Servus TV(セアヴスTV)』に対し、「ホンダは我々に対し、1年につき3,500万ユーロ(約46億6,000万円)でエンジンを供給すると申し出ていたよ」と語っていた。
だが、デニスがホンダがレッドブルにエンジン供給を行うことを拒否したため、レッドブル-ホンダは誕生を見ずに終わっていた。
ベテランF1記者のアラン・ヘンリーは、2016年にはマクラーレン・ホンダが2016年には大きく飛躍しそうだとマクラーレンのブログに次のように書いている。
「ウォーキングの連中から前向きな話を聞くことができたよ。だが、そのもっとも明確な証拠となるのが、レッドブルがあれほど真剣にホンダエンジンを手に入れたいと望んでいたことだろう」
「(レッドブルの)チーム代表であるクリスチャン・ホーナーは現在行われている開発内容について聞いて非常に感心させられたと聞いているし、間違いなくそうする価値があると信じていたようだ」
【兆候3】ホンダはスロースターター?
さらに、ヘンリーは、これまでのホンダF1活動の歴史を振り返れば、ホンダが「本調子を出すまでには常に時間がかかっていた」と指摘している。
問題は、マクラーレン・ホンダにあとどれだけの時間が必要なのかということだろう。
「来年そうなっても驚きではないよ」
そう語ったのはフェラーリのチーム代表マウリツィオ・アリバベーネだ。
「なぜならルールがほとんど変わらないからね。だが、マクラーレンが競争力を高めるのは間違いないだろう。ホンダは過小評価できるような存在ではないよ」
「終わったばかりの(2015年)シーズンに比べれば、来季は必ずもっと興味深い戦いになると思っている」
【兆候4】現行エンジンにこだわりを見せるホンダ
来季のホンダ躍進を裏付ける兆候はほかにもある。現在、2017年か2018年に大きくエンジンルールが変更される可能性が出てきているが、最近ホンダが現行パワーユニットを継続使用するべきだという立場を打ち出したことだ。これも来季以降大きく改善できるという自信の表れではないかと受け止められている。
「普段、ホンダは会議ではほとんど発言しないんだ。だが、最近の会議では彼らは明確にハイブリッドをやるためにF1に復帰したのだということを主張していたよ」
そう語ったアリバベーネは次のように付け加えた。
「だから、私としては、現在のレギュレーションを変えるということになれば、彼ら(ホンダ)もそれに反対するだろうと思うよ」