F1カナダGPが財政危機に陥っていることが明らかとなった。
■多額の債務を抱えるカナダGP主催者
ケベック州の『La Presse(プレス)』紙が報じたところによれば、カナダGP主催者による納入業者への支払いが滞っているという。
カナダGPの主催会社であるオクタン・レーシング・グループの社長であるフランソワ・デュモンティエは『La Presse(プレス)』に対し、「それは事実だ。認めるよ」と語った。
2009年に、それまでの主催者に代わってジル・ビルヌーブ・サーキットでF1を主催する契約を結んでいたデュモンティエだが、2014年には10年間にわたって開催契約を延長していた。しかし、早くも厳しい状況に直面することになったデュモンティエは、次のように語った、
「チケットの売り上げや関連商品の売り上げが伸びているにもかかわらず、今年は厳しかったよ」
すでに2015年のカナダGPが開催されてから6か月近くになろうとしているが、『La Presse(プレス)』によれば、オクタン社はまだ主要な納入業者に対して総額で6けたに及ぶ額(数千万円)の負債を抱えている状態だという。
「こういうことは珍しいことではないし、今回が初めてというわけでもない」と主張したデュモンティエは、次のように続けた。
「彼らはみんな長年一緒に仕事をしてきたところばかりだ」
「彼らの99%がまだ協力してくれているし、今後もF1レースを継続したいと望んでいる」
■現在のF1開催契約は構造的に利益が出ない
デュモンティエによれば、現在のF1レース財政状態は悲惨と言うほどのものではなく、「2、3年前のほうがもっと心配していた」という。
だが、かつてノルマン・ルゴーがレース主催者を務めていたときには、納入会社への未払いなどは発生していなかったと『La Presse(プレス)』は書いている。
「2つの異なる世界があるんだ」
そう述べたデュモンティエは、次のように続けた。
「私は家族経営的な事業を行っているが、2009年に興行主としてF1レースを開催するチャンスをつかんだ。残念ながら、私には財産はない」
「どんな民間企業も同じだが、ものごとがうまくいっているときには誰もが非常に満足できる。ものごとがあまりうまくいかないときは、興行主にはパートナーや納入業者たちと仕事に取り組むことが求められるんだ」
デュモンティエはさらに、現在の経済的環境と、F1最高責任者バーニー・エクレストンが運営するFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント/F1商業権管理会社)と結んだ契約は完全にマッチした状態ではないと次のように主張した。
「構造的に、この契約が有利なものでないことは明らかだ。エクレストン氏が腕のいい交渉家だということは間違いないよ」
■タイトルスポンサーや出資者の登場を期待
デュモンティエは、カナダGPにタイトルスポンサーがついてくれれば状況は変わっていただろうと語り、クリスマスまでには何らかの契約を結ぶことを期待していたと次のように続けた。
「私は、自分の忍耐力を試さなくてはならないときにきている。クリスマス休暇が終わったころには何らかの結果が出ると思っているよ」
さらに、デュモンティエは、現在は自分自身が唯一の株主となっているオクタン社に新たな出資者が現れることは「大歓迎」であり、いつでも交渉に臨むつもりだと次のように述べている。
「私よりももっと多くの財政源を持つオースティン(アメリカGP)のオーナーでさえF1レースを失ってしまうかもしれない。それは利益を生むことができないためだ。つまり、もはやこのビジネスは私のような家族経営的な企業には手に負えないということだ」
デュモンティエは、カナダ人F1ドライバーが登場すれば、状況も好転するのではないかと期待している。現在は、ウィリアムズとテストドライバー契約を結んだランス・ストロールを応援していると語ったデュモンティエは、次のように付け加えた。
「ジャック・ビルヌーブがいたころは、F1にとって非常にいい時代だったことは確かだ」