人気減少が続いているF1を再び魅力的なものにしようと、F1各チームは2017年から新たなルールを導入することに基本合意している。だが、そこへ至る道のりはかなり険しいものとなりそうだ。
F1最高責任者であるバーニー・エクレストンと、ジャン・トッド会長が率いる統括団体FIA(国際自動車連盟)は、2017年から独立系エンジンメーカーが製造する“カスタマーエンジン”をF1に導入し、現在の非常に高額なV6パワーユニットと並行使用できるルールの導入を進める方針を打ち出している。
■どうなる?二種類のF1エンジン問題
メルセデスとフェラーリは、明確にこのFIAが提唱する“カスタマーエンジン”導入には反対であるとの意思表示を行っている。一方、今季限りでのF1撤退もちらつかせていたレッドブルは、新たに独立系メーカーが製造する2.5リッターエンジンを導入することが、自分たちが来年以降もF1に残るための「条件」だったと認めている。
財政的に厳しい立場に置かれている小規模F1チームたちは、現時点においては現在のエンジンパートナーとの契約を尊重すべき立場にあるものの、もっと低価格でパワーユニットと同程度のパフォーマンスを発揮するエンジンが手に入るということになれば、その方針を支援する立場に回ることになるだろう。
■ホンダが高額なエンジン代金を提示したとレッドブル
一方、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、来季に向けてホンダとの間でエンジン供給に関する交渉を行っていたことを認め、次のように語った。
「ホンダでは我々に対してエンジンの費用として1年につき3,000万ドル(約37億円)を請求したいと考えているんだ。これは、まったくばかげた話だよ」
ホンダでは今のエンジンルールが継続されることを望んでいると発言していた。だが、ここまでのところ、マクラーレンとの協力関係は大失敗に終わっている。
■シャシールール変更にも懸念を表明したメルセデスAMG
メルセデスAMGでは、2017年に予定されているシャシーに関するルール変更も実際にはどうなるかは分からない状態だとほのめかしている。それは、導入が計画されている幅広タイヤへの対応に関し、安全性の問題が残るためだという。
だが、マクラーレン・ホンダは、そうした意見には反対だ。
「メルセデスAMGもかなり必死みたいだね」と語ったマクラーレンのエリック・ブーリエ(レーシングディレクター)は、次のように続けた。
「これはいつものゲームだと思うよ。どんな理由にせよ、変化が起こることを妨げようとする場合、安全性の問題に関する議論を始めようとするんだ」
■カスタマーエンジンの妥当性を問うメルセデス
いずれにせよ、2017年以降はさまざまなルール変更が予定されているが、ただでさえF1チームの歩調を合わせることが難しい中、新たに提唱されているエンジンの“二層構造”問題は最大の課題となる可能性もありそうだ。
現在のF1ルールのもとで最強を誇るメルセデスAMGのトト・ヴォルフ(ビジネス担当エグゼクティブディレクター)は次のように語った。
「見当すべき重要な問題があるんだ」
「エンジンの価格は小規模チームにとって適正なものだろうか? このエンジンのコンセプトはF1にとって適正なものだろうか? 我々はこうした問題について話し合いを行う準備はできているよ」
「すべてそうだが、要はどこに妥協点を見いだすかということだ。難しいのは、一つ屋根の下で、全員の利益を一致させることだよ」
■誰もが勝ちたいと願っている
ヴォルフはさらに続けた。
「それに、これには政治的な要素もある。これがメルセデスAMGの独走状態を打ち破る手段になると考えるチームもあるはずだからね」
「そして、ジャン・トッドはエンジンの価格引き下げを行いたいと思っている。バーニーは、自動車メーカーが権力を持ち過ぎたと考えている」
そう語ったヴォルフは、次のように付け加えた。
「だが、本当にそうだろうか? 私には分からない。私に分かっていることは、たくさんの人々が自分の目標を達成することを目指しているということだけだ」