今年はすでにドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルのゆくえも確定しており、今週末のF1ブラジルGP(15日決勝)と最終戦アブダビGP(29日決勝)は、いわば消化レースということになる。
だが、2年連続でチームメートのルイス・ハミルトンにタイトルを持っていかれたメルセデスAMGのニコ・ロズベルグにとっては、すでに来季のタイトル争いに向けた勝負が始まっているようだ。
■ブラジルでの優勝は譲らないとロズベルグ
一時はブラジルGP欠場のうわさも流れたハミルトンだが、発熱やモナコで軽い自動車事故を起こしていたことでブラジルへの到着が予定よりも遅れたものの、レースには無事に出走する見込みだ。
そのハミルトンは、ブラジルのインテルラゴス・サーキットで初勝利をあげ、子供のころからヒーローとしてあこがれてきたアイルトン・セナに敬意を表したいと語っていた。
だが、ロズベルグとて負けるわけにはいかない。ロズベルグはそのハミルトンのコメントを引き合いに出し、「彼の願望はよく分かるけれど、僕も同じようにあそこで勝ちたいと思っている」と宣戦布告を行っている。
まだブラジルで優勝したことがないハミルトンに対し、ロズベルグは昨年ここでポール・トゥ・ウィンを達成しており、今年は2連覇を目指すことになる。
■タイトル確定後にロズベルグを挑発したハミルトン
ハミルトンが今季のタイトルに王手をかけて臨んだアメリカGP(第16戦)では、ポールポジションからスタートしたロズベルグをハミルトンがスタート直後のターン1でコース外へ押し出すという展開に。その後トップの座を奪い返していたロズベルグだが、最後に自らのミスによってハミルトンに優勝をさらわれ、タイトルへの望みさえ失うことになっていた。
その後、ハミルトンはF1で「自分のチームメートとなるのは最悪のことだ」と発言。ロズベルグには勝ち目はないと手厳しいコメントを行っていた。
■来季に向けた心理戦でつまずいたハミルトン?
「ルイスはすでに2016年に向けての心理戦を始めているのさ」
そう語ったのは、1997年のF1チャンピオンであり、44歳となった今もフォーミュラEなどで現役ドライバーを続けているジャック・ビルヌーブだ。
ビルヌーブは、ドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に次のように付け加えた。
「問題は、あのコメントはロズベルグのやる気に火をつけただけだったことだね」
■反撃を開始したロズベルグ
事実、ロズベルグは第17戦メキシコGPでは4戦連続となるポールポジションを獲得すると、見事にレースでもトップでチェッカーを受けた。そして、レース後にはハミルトンがレース前に語った「冗談」のおかげでこの勝利を手にすることができたのだと語り、来季は今年と同じようなことにはならないとほのめかしていた。
元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーも、ロズベルグがこのままメルセデスAMGの実質上の「ナンバー2」として引き下がるつもりはないだろうと次のように語った。
「今季はルイスのほうがよかった。だから、彼がチャンピオンにふさわしいのは確かだ。だが、ロズベルグはメキシコで見せたパフォーマンスにより、今後に向けての決意を示してみせたんだ。彼は典型的なナンバー2ドライバーではないよ」
■ロズベルグの復調を示唆するベルガー
ベルガーも、ハミルトンが仕掛けた心理戦が逆効果となってしまったと考えているようだ。
「心理戦はニコによってはね返されているよ」
そう語ったベルガーは、次のように付け加えた。
「メキシコから、2014年の夏以降初めて、彼は単にハミルトンとのチーム内争いに勝利したいと思っているだけではなく、初F1タイトルの獲得も狙えることを示してみせたよ」